冷却能力を飛躍的に向上するグラフェン強化ヒートパイプを開発――銅製の約3.5倍の放熱性能

Illustration: Ya Liu and Johan Liu

スウェーデンのチャルマース工科大学は、アビオニクス(航空機向け電子機器)、データセンター、パワーエレクトロニクスなどに用いられる電子機器や電力システムを冷却する際の問題解決に役立つ、グラフェンベースのヒートパイプを開発した。研究は中国の復旦大学、上海大学、スウェーデンのSHT Smart High-Tech、イタリアのマルケ工科大学の研究者と共同で行われ、研究結果は2020年11月27日付けで『Nano Select』に掲載されている。

電子機器やデータセンターが適切に作動するためには、効率的に冷却する必要がある。ヒートパイプは、高効率で長い距離でも熱を伝達できる特徴があるため、電力システムを放熱するのに最も効率的なツールの1つだ。通常、ヒートパイプは、銅、アルミニウム、またはそれらの合金で作られている。しかし、これらの材料は比較的高密度で伝熱能力が限られているという課題がある。

研究では、これらの課題に対処できる新しいグラフェン強化ヒートパイプを開発した。このグラフェン強化ヒートパイプは、熱伝導率の高いグラフェン薄膜でできている。薄膜の内表面は、カーボンファイバーを枝編み細工のように配置した構造になっている。

その結果、市販されている銅ベースのヒートパイプの約3.5倍となる7230Wm−2K−1g−1まで飛躍的に放熱能力が向上したことが分かった。特に、軽量で高い耐食性が要求される場合、さまざまな電子機器や電力システムを冷却するのに大きな利点となる可能性がある。この成果は、グラフェン強化ヒートパイプが、アビオニクス、カーエレクトロニクス、ノートパソコン、ハンドセット、データセンター、スペースエレクトロニクスなどの軽量かつ大容量の冷却が必要な用途で利用されるための道を開くとしている。

また、オンラインバンキングや動画配信サイトなどに利用される大規模なデータセンターなどは、非常にエネルギーを消費する。航空業界よりも多く温室効果ガスを排出するため、環境への影響は大きい。そのため、この業界のカーボンフットプリント削減は不可欠だ。今回の発見は、これらのデータセンターやその他の用途にも、大幅なエネルギー効率の改善をもたらすかもしれない。

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Cooling electronics efficiently with graphene-enhanced heat pipes

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