- 2021-3-26
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- IoT, ISO認証, Journal of Materials Chemistry C, Manuel Pietsch, エレクトロクロミックディスプレイ, エレクトロクロミック効果, カールスルーエ工科大学(KIT), ディスプレイ, 学術, 導電性高分子PEDOT/PSS, 電子機器
消耗品として使用される電子機器の増加や、IoTなど新技術の活用拡大により、今後電子ゴミの量は増えていくと予想されている。資源を節約し、廃棄される電子機器を少なくするためには、持続可能なライフサイクルが必要だ。この問題を解決するために、カールスルーエ工科大学(KIT)の研究チームは、世界で初めて生分解性に関するISO認証を受けたディスプレイを開発した。研究の詳細は、『Journal of Materials Chemistry C』誌に2020年12月21日付で公開されている。
開発したディスプレイは、天然素材を主原料としてインクジェット印刷により製造されたもので、使用後は堆肥になる。ディスプレイとしての機能は、電荷を印加することにより可逆的に色が変わるエレクトロクロミック効果を利用している。エレクトロクロミックディスプレイは、LEDや液晶などを利用した市販ディスプレイと比べて消費電力が低く、部品の構成もシンプルだ。また、インクジェット印刷により安価に製造できるという利点もある。
開発したディスプレイは、導電性高分子PEDOT/PSSのエレクトロクロミック層、ゼラチンによる電解質、金電極、セルロースジアセテート製の基板で構成されている。ゼラチンを使用することでディスプレイは接着性と柔軟性を持ち、性能を損なわずに皮膚に直接装着できる。ウェアラブルデバイスとして利用することが可能だ。
研究チームは、今回開発した生分解性デバイス技術は、ディスプレイだけでなく他の電子部品にも展開できると考えている。洗浄が必要であったり使い捨てで利用されたりする医療機器や、再利用が認められていない食品包装の品質モニタリングなど、さまざまな分野の製品に応用可能だ。論文の筆頭著者でKITライトテクノロジー研究所研究員のManuel Pietsch氏は、「再生利用や再使用に生分解性デバイスを組み合わせることで、電子ゴミの環境への影響を最小限に抑える、または完全に防ぐことができるかもしれない」と、述べている。