動かしやすくケガから関節を守れるサポーターを開発――トンボの翅がヒント

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Science4Everyone/YouTube

クリスティアン・アルブレヒト大学キールの研究チームは、トンボの翅をヒントに、可動性と不動性を兼ね備えた柔軟な手関節装具(スプリント)を開発した。ストッパー付きヒンジのような構造で、手首が必要以上に曲がらないようにロックしつつ、可動範囲の動きは妨げない。研究結果は、2021年2月11日付けで『Applied Physics A』に掲載されている。

トンボの翅が、複雑な風の流れや硬い物との衝突に耐えるには、安定性と弾力性の両方が必要だ。「工学的には、不動性と可動性は相互排他的な機能となることが多い。しかし自然界ではよくあることだ」と、論文の筆頭著者であるAli Khaheshi氏は説明する。

生物の仕組みは一見すると単純そうだが、実際はずっと複雑だ。トンボの翅に張り巡らされた翅脈を拡大すると、スパイク状のクチクラがいくつも見える。翅はある程度自由に動くが、特定の角度以上になるとスパイクが翅脈をロックし、翅の動きを制限する。そして、スパイクは翅脈を支え、高負荷に耐えるために必要な安定性を翅に与える。

研究チームはこの構造を真似て、PLA(ポリ乳酸)を材料にスパイク状のメカニカルストッパーを備えたヒンジを3Dプリントした。大きさは14×3×2cm、重さは約23gだ。ベルトループも設け、サポーターの上から面ファスナーで手首に装着できる。トンボの翅と同様に、ある角度までなら手首を自由に動かすことができるが、曲げ角度が大きくなると、ストッパーが手首の動きを固定するとともに、外部負荷に耐えられるように支えるサポート機能を発揮する。

今回はウエイトリフティング時に装着することを想定して、制限角度を70度に設計したが、スパイクの大きさと位置を変えれば、手首の可動レベルを調整できる。

テストでは、スプリントの重さの1300倍に相当する、約320N(約32kg)の耐荷重能力を示した。「素材を変更すれば450kgまで耐えられる。それはウエイトリフティングの世界記録保持者が経験する力よりもずっと大きい」と、Khaheshi氏は語る。

この技術を応用すれば、手首だけでなく、ひじや膝関節用のサポーターも作製できる。運動時のアスリートの身体を保護するだけでなく、ねん挫や肉離れなどの治療やリハビリにも利用できる。軽量で装着しやすく、通気性にも配慮した構造が、従来のギプスやスプリントとは異なるとしている。さらに、可動モードからサポートモードへの切り替えへの時間遅延がないため、ロボット用途にも適している。研究チームは既に本技術の特許出願済みで、現在はスプリントの開発をさらに進め、製品化して市場に投入するためにパートナー企業を探している。

関連リンク

Fully supportive, yet mobile, splints

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る