自動車のフロントガラス両脇のピラーを「透明」にできる?――想像の世界の「透明マント」を実現する光学クローキングの進歩

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自然なインコヒーレント光(干渉性の低い光)で機能し、標準的な光学部品を用いて実現可能な不可視化クローク開発に関する近年の進歩を検証したチュートリアル論文が発表された。トヨタ自動車が米国に設立した研究拠点の1つである米Toyota Research Institute of North America(TRI-NA)などによるもので、2021年6月15日付で『Journal of Applied Physics』に掲載された。

クローキングとは、対象の物体をクローキング媒質で覆うことによりその全体を不可視化する技術のことで、メタマテリアル分野の研究対象として注目を集めてきた。光学クローキングは、遮へい物として機能するクロークの内側に置かれた対象物の周りをう回するように光を導く方法などで、物体を視覚的には見えない状態にするというものだ。このようなクローキングは、『ハリー・ポッター』シリーズのようなフィクションの世界では「透明マント」あるいは「光学迷彩」としてよく知られている。

そして近年、物体周囲の電磁放射の流れを制御することで、物体を視界から遮へいするクロークが実現されるようになってきている。対象物を不可視にするクロークは、戦争時のセンサーやディスプレイ、監視、自動車の死角除去、宇宙船、高効率の太陽電池など、さまざまな用途に応用できる可能性がある。

今回の論文で、研究者らは、自動車のフロントガラスの両脇を縁取るAピラーなどによる自動車の死角について調べた。運転中のドライバーや乗客の安全を確保する方法を模索する一環で、光がピラーをう回するようにして透明に見せることができないかを検討した。

メタマテリアルの進歩により、電磁波を操作するために金属と誘電体から複合体が作り出され、入射光をう回させて物体の周りに光学クロークを実現できる可能性が出てきた。

完全な光学クローキングを実現するには、媒質を問わず、あらゆる角度や分極、広範囲の周波数範囲で、物体の周りの電磁波を完全に散乱させる必要があるが、これはまだ達成されていない。だが、不可視化の要件を単純化することで、この20年間で、狭帯域のマイクロ波、赤外線、可視光において、球形トランスフォーメーションクローク、カーペットクローク、プラズモニッククローク、マントルクロークなどの革新的な研究が成し遂げられてきた。

実際の課題の1つは、位相関係が維持されるように、物体の周りの光学素子を最適化しなければならないということだ。最適化には、人工知能(AI)や機械学習が一定の課題解決に役立つ可能性がある。また、アルゴリズムは、実用的なクロークデバイスの観点から、必要な逆設計問題の解決に役立つ。

これらは、時間と費用がかかるシミュレーションなしで、デバイスや検知器の光学的応答を予測分析するための強力なツールとなり、動きや形状、環境に対応して自動制御するような不可視化を実現する可能性を高めることができるかもしれない。

同論文では、AI支援設計と積層造形技術を用いたアディティブマニュファクチャリングの両方の性能が急速に進歩していることから、あらゆる入射角で効果的に機能し、高い遮へい率と広視野を有する柔軟なクロークの実現が可能で、低コストかつ高効率での大量生産ができると予測している。

関連リンク

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