室温付近の熱電変換効率を2倍にする熱電材料を開発――室温廃熱の有効活用に期待 大阪府立大学ら

大阪府立大学は2021年8月12日、近畿大学工業高等専門学校および高輝度光科学研究センターと共同で、テルル化ゲルマニウム(GeTe)の電子構造を精密制御することで、室温付近の熱電変換効率を既存材料の最大2倍にまで増大させることに成功したと発表した。

室温付近の排熱は存在量が多いことが知られているが、小規模かつ希薄な状態で分散していることが多いために、熱電発電技術以外では回収が難しいことが知られている。しかし、その回収に必要となる室温付近で高い熱電特性を示す室温熱電材料の開発はこれまで思ったように進んでこなかった。

今回、従来は250~600℃で高い性能を示す熱電材料のGeTeの熱電変換出力因子を、室温から150℃の室温付近で増大させることに成功した。

熱電性能向上には、従来知られている価電子バンドに加えて、新たな価電子バンドが寄与していることを、大型放射光施設「SPring 8」の粉末結晶構造解析ビームライン「BL02B2」を活用した結晶構造解析などによって解明。また、通常は困難な固溶体化試料の正確な電子構造計算を、高効率かつ高精度で計算できるよう計算コードを改良することで、電子構造の精密制御を可能にした。

今回開発したGeTe固溶体化試料を、同じ試料作製プロセスで作製した既存材料Bi2Te3(テルル化ビスマス)と、室温から150℃の温度範囲で熱電変換出力因子を比較したところ、最大で2倍まで増大したことが分かった。また、Bi2Te3のように、ナノ粒子を使った微細組織の最適化などにより、さらなる熱電性能の向上も期待される(冒頭の画像を参照)。

今回の室温熱電材料の開発と制御方法の解明によって、その成果をデバイス開発に展開すれば、室温廃熱を効率的に電気変換する技術に一歩近づくことになるという。また、今回使用したゲルマニウムは、既存材料で使用している希少金属ビスマスより資源量が約30倍多いため、代替材料として省資源化戦略にも貢献する。

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