「構造色」を利用した高効率カラーディスプレイの研究

安価でエネルギー効率の高い高解像度カラーディスプレイを実現する新しい手法が開発された。 Photo Credit Thor Balkhed

スウェーデンのリンショーピング大学の研究チームが、材料内部の微細構造からの反射光による干渉効果に基づく「構造色」を活用し、安価でエネルギー効率の高い高解像度反射型カラーディスプレイを実現する手法を開発した。気相重合により生成する導電性ポリマー薄膜を用い、UV光線照射により膜厚と誘電率を制御することによって、顔料などの色素や発光ダイオードを使うことなく、可視領域における全ての色を発色することに成功した。薄くて軽く安価で高効率のカラーディスプレイや電子ラベルなど、広汎な応用が期待されており、研究成果は2021年7月5日の『Advanced Materials』誌に論文公開されている。

物体の色は、特定の波長の光を吸収する色素によって生成し、それ以外の波長の光が反射されることで色として認識される。携帯電話やコンピューターなどのデバイスでは、赤、緑、青の小型発光ダイオードが使われているが、発光ダイオードの製造コストは比較的高く、あらゆる場所で使用されている現在、その消費エネルギーの総量は膨大なものだ。

そこで研究チームは、エネルギー効率が高く、薄くて軽いディスプレイを実現する可能性を持つ発色メカニズムとして、「構造色」に注目した。構造色は、光が材料内部の微細構造によってナノメータスケールで反射される反射光による干渉効果によって発色する。よく知られた例として、孔雀の羽根は基本的には茶色だが、微細な内部構造によって独特な青緑色の光沢を生成する。シャボン玉やCDディスクに見られる虹色も、構造色の一例だ。顔料などと異なり、紫外線によって脱色することがないので、繊維や自動車の塗装など工業的な応用も進められている。

構造色による反射型ディスプレイは基本的に単色であり、カラー発色させるには非常に複雑な技術を要する。研究チームは、気相重合により導電性ポリマーのナノスケール薄膜を生成する際、事前に基板上の酸化剤プリカーサにUV光線を照射して、生成する膜厚と誘電率を制御した結果、可視領域における全ての色を生成することに成功した。また、フォトマスクを利用したUV光線照射により、基板上でパターン生成してカラーディスプレイの高解像度化を実現した。更に、ポリマーの酸化還元状態に関する電子化学制御によって、動的に発色を調整できることも見出し、カラー画像の動的制御が可能であることも示し、構造色によるカラーディスプレイ実現の可能性を示した。

「開発した技術は、電子書籍端末や、カラー電子ラベル、ガラスやレンズの光学コーティングなどの用途に大きな可能性を持っており、将来的には更に進化した多機能ディスプレイが製造できるようになる。デジタルディスプレイによって得る情報は増加しており、安価でエネルギー効率の高いディスプレイのメリットは大きい。実用化に向けて研究課題について、既に新しいプロジェクトを開始している」と、研究チームは説明する。

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