2030年までに米連邦政府の車両をEVへ切り替えることで、長期的に約6000億円のコスト削減の可能性

米Atlas Public Policyは、米連邦政府が運用する車両の電気自動車(EV)化評価リポート「FEDERAL FLEET ELECTRIFICATION REPORT」2021年8月版を発表した。

米連邦政府は、アメリカにおいて最大の車両運用者だ。米郵政公社(USPS)を除く連邦政府機関は計31万5000台の軽自動車とバスを管理しており、さらにUSPS単独では19万2000台の軽自動車を運用している。一部の例外を除き、連邦政府が管理運用している車両はガソリンあるいはディーゼル燃料で走行する。

しかし、EVは連邦政府車両としての利用に適している。連邦政府車両は走行距離が予測可能で、定期的に中央の車両基地に戻り、長時間待機するため、待機中に充電できるからだ。さらに、EVに切り替えることで、温室効果ガスや有害な大気汚染物質の排出量削減、石油への依存度低下によるエネルギー安全保障の向上など、多くの社会的利益がもたらされる。

EV使用は、燃料補給やメンテナンスのコストを削減するので経済的利益ももたらすが、EV購入時に発生する先行投資費用は高額のため、資本コストだけを考えるとEV化は不経済な選択のように思える。

そこで、今回の調査では、ハイレベルの総所有コスト(Total Cost of Ownership:TCO)分析を行い、2025年または2030年にEVを購入した場合の車両購入および運用にかかる総コストを、同等のガソリン車やディーゼル車を購入した場合の総コストと比較した。

その結果、2025年までに、USPS以外の連邦政府車両の40%およびUSPSの車両の97%を、同等のガソリン車やディーゼル車よりも低いTCOでEVに切り替えできることが分かった。つまり、従来の車両ではなくEVを選択すると、車両の耐用年数にわたってコストを削減できる。

同リポートは、2030年までに、USPSを含む連邦政府機関が保有する車両の大部分はTCOベースでコスト競争力を持つようになると予測している。USPS以外の連邦政府車両をEVに切り替えることで車両の耐用期限までの間に11億8000万ドル(約1300億円)、USPS単独でのEV化では43億ドル(約4700億円)もの節約が可能であると見込んでいる。

また、USPS以外の連邦政府機関は、TCO競争力がある車両をEV化することで得た節約分を、まだEVのコスト競争力がない車両クラスのEV化に再投資することでより早くEV化を進めることができ、このような節約分を利用することで、2025年には連邦政府車両の96%をEVにすることが可能との見込みも示している。

同リポートでは、連邦政府機関はこの機会を捉えて、10年以内に新規購入または買い替えする小型車やバスをEVにすることを想定し、大規模なEV化計画を直ちに開始すべきだとしている。

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Federal Fleet Electrification Assessment

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