宇宙を相手に働こう――エンジニアが転職先として検討すべきその魅力とは

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創業10年以内、評価額10億ドル以上、未上場――こうした条件に当てはまる企業、革新的な製品やサービスを生み出して驚異的なペースで成長を遂げる企業を「ユニコーン企業」と呼ぶ。そのユニコーン企業に該当する日本の企業は数社しかないと言われているが、アメリカや中国には200社以上もあるという。

前回紹介した製造業エンジニアを対象とした調査では、勤務中の企業に将来性を感じているか、携わっている製品・サービスはワクワクする/夢があるものか、と質問。「将来性がある」「ワクワクする」と肯定的に考えるエンジニアよりも、否定的な見方をするエンジニアの方がわずかに多かった。

ただ、エンジニア専門の転職支援会社メイテックネクストの河辺真典代表取締役社長のコメントを前回記事で紹介したように、宇宙関連の産業に目を向けると、日本にも「将来性がある」「ワクワクする」ような企業がいくつかある。

例えば、日本経済新聞社が公開した2020年「NEXTユニコーン調査」によると、企業価値100億円以上の企業は前年から17社増えて80社に。上位10社に目を向けると、2位にスペースデブリ(宇宙ごみ)除去サービスを手掛けようとするアストロスケールホールディングス、8位に月面資源開発の事業化に取り組むispaceと、宇宙関連企業2社がランクインした。

将来性があって、ワクワクできて、夢がある製品・サービスに携われるかもしれない宇宙関連企業。そこではどのようなビジネスが展開されていて、どんな人材が求められているのだろうか。メイテックネクストの河辺社長に話を聞いた。

急成長する「宇宙ビジネス」、その中身は?

――宇宙関連の市場規は37兆円に達し、2040年までに約3倍の100兆円規模になると予測されています。宇宙関連の市場は、どのような状況にあるのでしょうか。

[河辺社長]「宇宙関連のビジネス」と言われたら、ロケットの打ち上げをイメージする人が多いでしょう。確かに、地上から宇宙へロケットを飛ばすプロジェクトは、エンジニアにとってインパクトがあると思います。最近では、アメリカのSpaceXがイーロン・マスク氏の壮大なビジョンと約3兆円という莫大な投資によって、従来ではあり得ないスピードで民間初の有人宇宙飛行までも実現し、大きな話題となりました。

しかし、宇宙産業に占めるロケット打ち上げの比率はさほど大きくありません。宇宙産業には、「ロケットを飛ばす」だけでなく、「ロケットに載せる人工衛星を開発する」「人工衛星から得られるデータを解析してそれを利用する」といった事業領域もあり、市場規模が拡大しています。

先ほどのSpaceXの場合、ロケットを飛ばすときに、人工衛星などのペイロードを積んでいます。人工衛星を打ち上げられる会社はアメリカにはSpaceXの他に複数社あり、ヨーロッパ、ロシア、中国にもあります。自社でロケットを開発/打ち上げできないとしても、こうした会社に委託すれば、自社開発の人工衛星を宇宙へと打ち上げることができるのです。

打ち上げを委託できる企業が増えてきたことで、費用も比較的リーズナブルになってきて、人工衛星打ち上げのスケジュールも、従来より短期間で組めるようになってきました。こうした状況の変化によって、人工衛星の開発が加速してきているわけです。

さらに、人工衛星から得られるデータを利用するビジネスに目を向けると、実に多岐にわたるビジネスが展開されています。通信衛星を介したインターネット接続サービスや、測位衛星を利用したGPSはもはや私たちの生活に欠かせないものです。天気や自然災害の状況を把握する、農作物の作付け具合や人の流れなどを読み取るといったことも可能になりました。こういったデータ解析を手掛ける会社も数多く誕生しています。

もっと言えば、SpaceXをはじめとして、さまざまな国や企業が現実的なレベルで、火星に着陸して火星の地表の生物やエネルギー資源を調査しようとしています。移住先として火星を検討しようというところまで話が進んでいるプロジェクトもあります。

宇宙産業にはこうしたビジネスの広がりがあり、夢のあるプロジェクトが進められています。今の仕事に閉塞感を抱いてしまっているエンジニアの皆さんには、外の世界に目を向けるともっとワクワクできる世界もあるのだということを、もっと知ってもらいたいのです。

宇宙産業でエンジニアとして働く魅力は?

――宇宙産業の魅力を伺ってきたわけですが、実際にその業界に踏み込んでエンジニアとして働くとしたら、どんなところにやりがいや働く魅力を感じられるのでしょうか。

[河辺社長]宇宙産業に関わる民間企業には、日本を代表するような大企業もありますが、社員数が少ない企業がほとんどです。小規模であるため、業務のカバー範囲が広く、自分の裁量でできることが多いため、仕事にやりがいを持てる環境だと言えます。

例えば人工衛星の開発においては、高度な技術知識を持ったわずか数名のエンジニアが、資金、納期、品質などをすべてコントロールしながら開発を進めているのが実状です。自動車産業なら何百万台も量産することになり、一部の機能/部品を開発するために数十人、数百人のエンジニアが携われることになります。それが小規模な人工衛星のメーカーなら、製品を完成させるまで、1人のエンジニアがすべての機能/部品、工程に携わります。少人数の開発チームで試行錯誤し、出来上がったらみんなで喜びを分かち合う。ものづくりの魅力を感じやすい環境だと思います。

また、新しい分野であることから、お手本やノウハウのようなものはさほど蓄積されていません。手探りの状態から始めて、PoC(Proof of Concept:概念実証)のプロセスも経ることになります。1つ間違えれば数億円の開発費が吹き飛びかねない中で実験をして、失敗と検証を繰り返していく。その都度、「なぜこの問題が起きたのか?」ということを突き詰め、原理を追及して問題を一つ一つ解決していく開発スタイルになるでしょう。お手本やノウハウといったものがない中で新しいものを作り上げる。このような経験を積むことができれば、その後、他の業界に転職することになったとしても、転職先で高く評価されると思いますし、生涯にわたって役に立つ経験になるはずです。

こうした手探りで新しいものを作り上げていく仕事こそ、エンジニアにとって、ものづくりの醍醐味を感じられるものだと思います。まだ先輩エンジニアたちがマニュアル化できていない領域に挑むとなると、どんな結果になるか見通しを立てづらく、やってみないと分からないことが多いでしょう。しかし、こんなおもしろい業界は、なかなかないのではないでしょうか。

さらに、宇宙産業自体、未踏破の領域が広がっています。月面を走る自動車を開発する、火星で調査するロボットを作る――子どものころに夢見ていたような製品/サービスの開発に携われると思うだけで、ワクワクしてしまうエンジニアもいるのではないでしょうか。

宇宙産業ではどんな人材が求められている?

――こうして伺っていると大変魅力的な宇宙産業ですが、未経験者でも採用される可能性はあるのでしょうか? ここ数年、国内でも民間のベンチャー企業が台頭し、メディアを賑わすこともありますが、未経験者に対しての門戸は狭いままなのではないかという印象があります。

[河辺社長]確かに国内では、大学で宇宙関連の研究室に所属していた人たちがそのまま宇宙産業へ進み、それ以外の分野からの人材流入は決して多くありません。未経験者が宇宙産業へ飛び込みたいのなら、特定の分野に特化したスペシャリストである必要があるでしょう。採用はかなりピンポイントで絞り込まれているのが現状です。

一方で先ほどもお話ししたように、スペシャリストとしての技能が求められながらも、製品開発のほぼ全工程に携わることになります。設計、開発、実験、調達と、複数の業務が担当範囲に含まれる求人が多いです。別の業界で設計に専念してきたエンジニアであっても、宇宙産業に転職してきたら組み立てや実験もやることになるでしょう。このような幅広い業務内容の求人は、例えば自動車業界ではまずあり得ません。

そのため、どんな仕事にもチャレンジできる方、好奇心が強い方、自発的に動けるタイプの方が宇宙産業には向いていると思います。業務の中では、自分の専門外の仕事を頼まれることも多いでしょう。会社の志に共感して、「この会社のためなら」と思って働ける方でないと、辛い思いをすることになるかもしれません。組織の中で自分の技術領域だけを仕事として割り切ってやっていくタイプの方や、会社に開発環境を整えてもらって、自分は開発だけに専念していきたいといった思考の方にはマッチしない恐れもあります。

――具体的に、国内の宇宙産業には、どのような求人があるのでしょうか?

[河辺社長]国内では、ここ10年ほどで設立されたベンチャー企業の求人が目立ちます。

北海道を拠点として、観測ロケットなどの低価格ロケットを開発/製造/打ち上げするインターステラテクノロジズも人材を募集しています。堀江貴文氏がファウンダーであることでも知られる会社で、よりリーズナブルで便利なロケット開発を目指しています。

今回はインターステラテクノロジズの求人をご紹介しましょう。同社がコーポレートサイトで募集中の職種の1つに、「推進・回転機械エンジニア」があり、業務内容を見ると、「ターボポンプの設計・開発・組立・試験実施・検査・調達、ターボポンプ試験設備の計画、概念設計」となっています。ロケットの基本は、液体燃料と液体酸素をコントロールして最適な状態で燃焼させることです。そのためにバルブを制御したり、わずかな軸のずれを起こした場合に制御して立て直したりといった機構が必要です。こういった機構に必要な設計/開発/評価/解析の技術が求められているわけです。

この求人であれば、異業種からの転職であっても、例えば自動車業界や航空機業界でエンジン開発の核心的な技術に携わったことがある方や、半導体製造装置用の真空ポンプを作っていた方、あるいは求人に記載されている要素技術を持っていて、全工程を1人で担当できるようなポテンシャルのある方が採用されるでしょう。他にも、強度解析、熱解析、溶接技術といった分野で際立った能力を持つ方を募集する求人も出ています。

数年前から宇宙産業に参入しようとする企業が増えてきました。今後、宇宙関連の求人はさらに増えてくることでしょう。これほどワクワクできる業界は、他にはなかなかありません。エンジニアの方たちには、宇宙産業で働く魅力を知ってもらい、興味を持ってもらえるようであれば、果敢にチャレンジしてもらいたいですね。

取材協力

メイテックネクスト

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