UCSD、リチウム金属電池の性能を改良する積層圧力を発見

リチウム金属電池は、リチウムイオン電池の負極で利用される炭素系材料の代わりにリチウム金属を使用する電池だ。充放電時に電極近傍でリチウム金属が析出してデンドライトと呼ばれる樹枝状結晶が成長しやすく、電池寿命が短いことや、ショート発生など安全性の問題がある。だが、原理的にはリチウムイオン電池の2倍の容量が可能とされ、電気自動車や電子機器の電源として研究が進められている。

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)を中心とする研究チームは、リチウム金属電池の性能を最大限に引き出す研究を行い、最適な電池にかける積層圧力を発見した。研究成果は『Nature Energy』誌に2021年10月21日付で公開されている。

リチウム金属電池の電池寿命については、充放電中に圧力をかけると性能と安定性が向上し、寿命が向上することは経験上知られてるが、その理由についてはほとんど明らかになっていなかった。UCSDの研究チームは、この謎を解明しただけでなく、性能向上のための最適圧力も導き出した。具体的な手法としては、特性評価とイメージング技術を用いて、リチウム金属電池の形状を調べ、異なる圧力をかけたときの性能を定量化した。

その結果、高圧下ではリチウム粒子がきれいに詰まった柱状に堆積するが、低圧の場合はリチウム粒子が無秩序に堆積して多孔質の空間ができ、そこでデンドライトが成長することがわかった。きれいな柱状構造をとるためには、350kPa(約3.5気圧)の圧力が必要であり、このプロセスは、電池の電解質の固体電解質間相(SEI)構造に影響を与えないことも示された。

これらの研究は、共同研究者のゼネラルモーターズの研究開発センターで実施された。また、同じく共同研究者であるアイダホ国立大学のグループは、分子動力学シミュレーションを用いて上述した積層圧力の範囲を確認し、この独特なプロセスのメカニズムについて明らかにしている。

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