低コスト高効率タンデム型太陽電池向け透過型Cu2O太陽電池で世界最高効率8.4%を達成 東芝

東芝は2021年12月22日、低コストで高効率なタンデム型太陽電池の実現に向けて活用が期待されている透過型亜酸化銅(Cu2O)太陽電池にて、発電層の不純物を抑制することで、世界最高の発電効率8.4%を達成したと発表した。Cu2O/Siタンデム型太陽電池が、Si太陽電池の世界最高効率26.7%を超えるポテンシャルを有することを確認したという。

代表的な高効率太陽電池のガリウムヒ素半導体(GaAs)などIII-V族太陽電池を積層したタンデム型太陽電池は、発電効率がSi太陽電池と比べて高く、30%台の発電効率が報告されている。しかし、製造コストがSi単体の太陽電池と比べて数百倍~数千倍と高く、幅広い製品に適用するには大幅な低コスト化が必要になる。

透過型Cu2O太陽電池は、地球上に豊富に存在する銅と酸素の化合物であるCu2Oを主な材料としており、III-V族半導体と比べて、基板(ガラス)、原材料(主に銅と酸素)、製造装置(半導体や液晶で用いられるスパッタ装置)がいずれも安価で、大幅な低コスト化が期待できる。

短波長光を吸収して発電し、長波長光を透過する透過型Cu2O太陽電池は、ボトムセルに長波長光で発電するSi太陽電池を用いることで、全体として、短波長から長波長まで幅広い波長の光をエネルギーに変換でき、限られた設置面積でも必要な電力を供給できる低コスト高効率太陽電池として期待されている。

Cu2O/Siタンデム型太陽電池模式図

同社は今回、Cu2Oを用いたトップセルの発電効率の低下の原因となるCu2O発電層中の不純物の量を制御する独自技術を用い、優れた光透過性を有する世界最高の発電効率8.4%の透過型Cu2O太陽電池の開発に成功した。

Cu2O発電層は、大面積に拡張できる成膜法である反応性スパッタ法を用いて薄膜形成している。Cu2Oの半導体結晶としての性質から、酸化銅(CuO)や銅(Cu)といった不純物が結晶中に生成されやすく、それらが発電効率と光透過性の両方の低下原因になっていた。

今回、X線回折法を用い、Cu2O発電層に含まれるごく微量のCuOやCuを直接検出することで不純物の量を精密に数値化。2種類の不純物が最小化する成膜プロセス条件を特定し、優れた光透過性と高い発電特性(発電効率8.4%)を両立させた透過型Cu2O太陽電池の開発に成功した。

透過型Cu2Oセルの結果

トップセルに開発した発電効率8.4%の透過型Cu2O、ボトムセルに25%の高効率Si太陽電池を適用したCu2O/Siタンデム型太陽電池の発電効率を見積もったところ、発電効率27.4%と試算。この予測値は、Si太陽電池の世界最高効率26.7%を上回る高い発電効率となる。さらに、開発した太陽電池を電気自動車(EV)に搭載した場合、充電なしの航続距離は1日当たり約35kmと試算できる。

EVへのCu2O/Siタンデム型太陽電池搭載イメージ

同社は今後、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として、Cu2O/Siタンデム型太陽電池の目標値である透過型Cu2Oセルの発電効率10%達成に向けて開発を進めていく。また、NEDOの委託事業とは独立して、東芝エネルギーシステムズと共同で、量産タイプのSi太陽電池と同じサイズの大型Cu2O太陽電池の開発を開始した。2023年度を目標に外部評価用サンプルの供給を開始し、2025年度を目標に実用サイズのCu2O/Siタンデム型太陽電池の製造技術の完成を目指す。

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