グラフェン量子ドットデバイスの集積化合成技術を開発――グラフェンナノリボンを活用 東北大学

東北大学は2023年1月6日、同大学大学院工学研究科などの研究グループが、グラフェンの1次元材料であるグラフェンナノリボンを用いた、新たなグラフェン量子ドットデバイスを開発したと発表した。同大では次世代の高性能量子コンピュータの実現につながる成果だとしている。研究成果は2022年12月22日、ネイチャーパブリッシンググループの英国科学雑誌Communications Materials(電子版)に掲載された。

原子オーダーの薄さを持つ2次元シート材料のグラフェンは、優れた物性を持つことから多くの電子デバイスへの応用が期待されている。これまでの研究により、グラフェンを疑似的に0次元とみなせるスケールまでナノスケール化することで、量子ドットとしての振る舞いを示すことが明らかになっている。このグラフェン量子ドットを用いることで、スピン型量子コンピュータのコヒーレンス時間の長寿命化が期待されているが、グラフェン量子ドットを基板上に自在に配置する「集積化」については、全く解決策が見つかっていない。

研究グループはこれまで、1次元構造のグラフェンであるグラフェンナノリボンを大規模集積化合成する手法を独自に開発。今回は1次元グラフェンナノリボンを0次元に量子ドット化する技術を開発したうえで、グラフェン量子ドットデバイスの大規模集積化合成の実証を行った。

研究グループでは、グラフェンナノリボンの長さを決定している初期のNiナノバー長(LNi)を変化させて合成。その結果、LNiを短くするにつれグラフェンナノリボンデバイスの作製効率が向上することが分かった。また、合成されたグラフェンナノリボンの量子伝導特性を〜15K(―258℃)の低温下で測定した結果、特定の LNi(100~200 nm)の条件で極めて良好なクーロンダイヤモンド特性が高確率で観測されることを確認。研究グループはクーロンダイヤモンド特性とグラフェンナノリボン構造解析の結果から、グラフェンナノリボン中に形成された幅の狭い局所構造が0次元の量子ドットとして振舞っている可能性があるとしている。

また、基板上に16個のグラフェンナノリボンデバイスを集積化し、クーロンダイヤモンドが観測されるデバイス確率を調べたところ、半数以上の9個のデバイスで明確なクーロンダイヤモンドを観測した。これによって、56%の作製効率でグラフェンナノリボン量子ドットを同一基板上に集積化合成可能であることが分かった。

さらにグラフェンナノリボン量子ドット中の励起準位は20K(―273℃)程度まで安定に存在可能であることも明らかになった。

研究グループは、量子ドットデバイスの作製効率と大規模集積化の技術は、今後格段に向上させられるとしており、将来的な次世代高性能量子コンピュータへの応用に期待を寄せている。

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