燃料補給せずに地球を半周できる水素燃料航空機のコンセプトを発表――CO2排出ゼロのフライト実現を目指す

英Aerospace Technology Institute(ATI)は、液体水素を動力源とする乗客279名の中型航空機のコンセプトを発表した。英国政府の支援の下、ATIが主導している研究プロジェクト「Fly Zero」に参加する航空宇宙産業の専門家チームが開発した。FlyZeroプロジェクトは、10年以内にゼロカーボンの商業航空を実現することを目指している。

この中型機の航続距離は5250海里(約9700km)。現在の航空機と同じスピードと快適さで、ロンドン-サンフランシスコ間(4664海里/約8600km)を燃料補給なしで直行でき、ロンドン-オークランド間(9911海里/約1万8400km)は1回の燃料補給で飛行できるという。

翼幅54メートルの主翼に、水素を燃料とするターボファンエンジン2基を搭載。燃料の液体水素は、胴体後部にあるマイナス250℃の極低温燃料タンクと、胴体前部にある2つの小型タンクに貯蔵される。この小型タンクは、燃料が燃え尽きても機体のバランスを保つ役割を担う。

燃料となる液体水素は、1kg当たりでジェット燃料として使用されるケロシンの3倍、バッテリーの60倍ものエネルギーを持ち、軽量で燃焼時にCO2を排出しない。水素燃料を使用して、より大型で航続距離の長い航空機を実現することで、新しいインフラを少数の国際空港に集中させることができ、長距離フライトによる排出ガス削減への対処が期待される。

他の分野でも水素エネルギーへの移行が進んでいることから、需要の高まりが供給コストの低減につながることが期待されており、2030年代後半には、燃費の低い新世代の高効率水素エンジンを搭載する航空機は従来の航空機よりも運用経済性の面で優れているだろうと予想されている。

2022年初頭には、3タイプ(リージョナル航空機、ナローボディ機、中型機)の最終航空機コンセプト、技術ロードマップ、持続性評価など、FlyZeroプロジェクトからの詳細な調査結果が発表される予定だ。

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Zero-carbon emission flights to anywhere in the world possible with just one stop

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