日本板硝子(NSG)は2022年2月2日、新たなFRP/FRTP(繊維強化プラスチック)用補強材として、高弾性/高強度ガラスファイバー「MAGNAVI(マグナビ)」を開発した。耐熱性、電波透過性等のガラスファイバーの特性はそのままに、剛性と強度を高めている。
FRP/FRTPなどの複合材料は、産業製品部材に金属の代替として採用するケースが増えている。補強材として使用されるカーボンファイバーは一部の用途に電波透過性やコスト面、黒い色調といった点が適さないという課題、ガラスファイバーは強度や剛性の面でカーボンファイバーに劣るという点があり、FRP/FRTPの分野で、これらに代わる新たな補強材の開発が求められていた。
開発したMAGNAVIは、ガラス本来の特性とカーボンファイバーに優る耐衝撃性能を有しながら、カーボンファイバーよりも低価格で、ニュートラルな色調のガラスファイバーとなる。これまでカーボンファイバーでは対応が難しかった用途に対応する。
また、MAGNAVIは、生産時に希土類元素(レアアース)を使用し、その弾性を高めることがあるガラスファイバーとは異なり、レアアースを一切使用しないため、環境負荷を低減し、原料調達リスクを回避する。さらに、生産時のエネルギー使用、CO2排出量も削減する。
MAGNAVIは、汎用のEガラス(従来のFRP/FRTP用ガラスファイバー)に比べ優れた引張弾性率、引張強度を示すことに加え、カーボンファイバーやアラミド繊維と比較して極めて高い耐熱性を持つ。
複合部材にそれぞれの補強材を添加(いずれもPA66に20%添加)し、Eガラスとカーボンファイバーを添加した場合で比較すると、MAGNAVIは強度や耐衝撃性を高め、部材の機械性能を飛躍的に向上させた。なお、Eガラス成型品物性を100として表示している。
MAGNAVIは、ガラスファイバー特有の電気絶縁性と、従来のガラスファイバーから改善した高い機械特性を有しており、絶縁性と高強度が求められる様々な用途に使用できる。また、弾性率はカーボンファイバーに比べ若干劣るが、カーボンファイバーを凌ぐ高い衝撃性と色の選択性を有し、比較的安価であるため、カーボンファイバーの代替としてより汎用的な用途に使用できる。
高圧送電分野の碍子(ガイシ)は、軽量、高強度、絶縁性の要求が高く、カーボンファイバーは使用できず、かつ酸性雰囲気での脆性破壊しない耐酸性が要求されるが、MAGNAVは使用に向いている。
MAGNAVIは、既にサンプルワークを開始。2022年下期より、三重県の津事業所での生産体制を整備し、順次販売を拡大していく。