ペロブスカイト太陽電池を高効率化し安定化する技術を開発

リトアニアのカナウス工科大学(KTU)を中心とし、中国、イタリア、スイスなどの研究者からなる研究チームが、ペロブスカイト太陽電池薄膜の欠陥生成を抑制する新しい不動態化(パッシベーション)層材料を合成した。不動態化層に適したフェニレンジアンモニウム異性体を見出し、温度や湿度など周囲環境条件に対する耐性を高め、キャリア移動度を向上する手法を考案した。ペロブスカイト太陽電池として23.9%の極めて高いエネルギー変換効率とともに、1000時間以上の動作安定性を達成し、ペロブスカイト太陽電池の発展を促進する技術として期待される。研究成果が、2021年11月4日に『Nature Communications』誌に公開されている。

ペロブスカイト太陽電池(PSC)は、一般的なシリコン太陽電池よりも材料コストが低く、スピンコートなどによる簡便な製造が可能なことから製造コストも低く抑えられる。更に、デバイスとして薄く軽量でフレキシブルなので、フィルムなどに加工して高層ビルの壁面や電気自動車のルーフなどにも設置できることから、現在、世界的に研究開発が活発化している。

しかしながら、PSCの抱えている問題点の1つとして、ペロブスカイト薄膜材料が温度や湿度などの周囲環境条件の影響を受け、電荷キャリアを捕捉する欠陥が形成されやすく、太陽電池性能が急速に劣化することがある。そのため、ペロブスカイト薄膜表面を物理的あるいは化学的に処理することにより、表面を不活性化する不動態化処理が施される。「だが、従来の不動態化では、薄膜表面にペロブスカイトの2次元(2D)層が形成され、その結果、特に高温におけるキャリア移動が抑制され、太陽光発電性能が損なわれる問題がある。太陽電池は高温になるので、これを回避することが必要だ」と、研究チームは説明する。

この問題を解決するため研究チームは、不動態化層としてフェニレンジアンモニウムの3種類の異性体を用い、2Dペロブスカイト層の生成エネルギー障壁を推定する研究を実施、不動態化層に適正な異性体について検討した。その結果、オルト異性体が立体障害効果によって、2Dペロブスカイト層生成を回避するだけでなく、最も効率的な不動態化を薄膜表面および内部にもたらすことを見出した。

これによりPSCの耐久性が顕著に改善され、太陽光エネルギー変換効率が増大して23.9%という高い効率を達成することが判った。更に、スイス連邦工科大学ローザンヌ校の研究者が、ラボ規模の300倍以上も大きい作動面積26cm2のPSCミニモジュールを使った実証テストを行い、高い変換効率を達成した。

現在、研究チームは、変換効率を高めるホールキャリアを導入できる新しいペロブスカイト組成について研究している。「PSCは、現在、最も急速に成長している技術の1つであり、商用化が成功すれば、気候変動問題の解決にも貢献できる」と期待している。

関連リンク

KTU researchers developed materials for extremely high-efficiency perovskite solar cells

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