電力を蓄えることにより構造を修復する「自己修復能力」を持つ電極材料を発見 東大

東京大学は2019年5月16日、同大学の研究グループが、電力を蓄えることにより構造を修復する「自己修復能力」を持つ電極材料を発見したと発表した。

電気自動車や太陽光発電など環境に優しい技術の社会導入が進む中で、電力を貯蔵/供給する電池への期待が高まり続けている。しかし、現在使用されている電池は充電できる電力量が限られており、また充電と放電を繰り返すことで性能が低下するため普及の妨げとなっている。そのため電池の中で電力を蓄える心臓部である、電極材料の改良が望まれている。

同大学の研究グループは、今回の実験において電極材料Na2MO3(今回はM=Ru)を充電すると積層欠陥と呼ばれる構造の乱れが徐々に消失し、完全に充電すると全く構造の乱れがない状態まで自己修復されることを発見した。

また、この自発的な自己修復は、充電と放電を繰り返した後でも生じることも見出した。この現象は、従来の電極材料における、多くのイオンを脱離すると構造が乱れて性能が大幅に劣化するというこれまでの常識と全く異なるものだが、実際にNa2RuO3では充電するごとに自己修復が行われ、電極材料に大きな負荷のかかる長期間での充電と放電を繰り返しても、ほとんど性能の劣化が起こらなかった。

この現象を解明するべく、同研究チームが充電過程における構造変化を放射光X線回折で、さらに詳細に調べたところ、自己修復現象にはナトリウムイオンが脱離した後に生じる空孔と構造中に残存するナトリウムイオンとの間で強いクーロン引力が生まれることが重要な役割を果たしていることが分かった。イオンと空孔が強く引き合うことで乱れのない構造へと自発的に変化し、自己修復がなされていたという。

今後は、このクーロン引力を他の電極材料にも導入することで、自己修復能力の発現や電池の長寿命化が期待できるとしている。

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