スチールよりも強くて軽量――MIT、2次元ポリマーを合成する新たな重合プロセスを考案

新しい重合プロセスにより、非常に安定した強固で軽量の2次元構造ポリマーシートを合成することが可能になった。/Credits:Image: polymer film courtesy of the researchers; Christine Daniloff, MIT

MITの研究チームが、2次元シート状ポリマー材料を合成する、安定性と量産性に優れた新しい重合プロセスを考案した。溶液中で2次元状に自己組織化する重縮合反応を利用し、非常に安定した強固な2次元構造が得られるため、軽量で耐久性のあるコーティングフィルムや、橋梁や鋼構造に向けた建設用ディスク材料に応用できると期待される。研究成果が、2022年2月2日の『Nature』誌に論文公開されている。

グラフェンやフォスフォレンなどの無機系2次元材料は、エレクトロニクスやフォトニクス、エネルギーデバイス用途として、活発な研究開発が進められている。一方、有機系ポリマーについても2次元シートを形成するように重合させることで、極めて強く軽量な材料が得られることが期待されている。これまでに2次元ポリマーを目指して様々な重合方法が検討されてきたが、2次元状に成長するポリマー端部にモノマーが重合する際、分子鎖が2次元平面から外れて上下に回転して3次元状に拡がり易いため、厳密な2次元シートを創成するのは困難だとされていた。

研究チームは、化学的に安定した強固な2次元ポリマー創成にチャレンジし、ポリアラミドの2次元シート形成を可能にする新しい重合プロセスを考案した。ポリマーを構成するモノマーブロックとしては、炭素と窒素原子のトリアジン環を含むメラミン化合物を用いた。適正な条件下における重縮合反応により、これらのモノマーが2次元シートに成長することを確認した。

「従来の1次元的な重合に基づくスパゲッティ状分子鎖の代わりに、シート状分子平面が形成され、平面内の共有結合によって化学的に極めて安定した2次元構造が得られる。この反応メカニズムは溶液中で自発的に発生し、製造安定性や量産性に優れている」と、研究チームは説明する。このような溶液中の自己組織化反応を利用して、スピンコート技術により、極めて強い薄膜フィルムを容易に得ることができる。更に、2次元状シートは互いの上に積層し、層間の水素結合によって強固に保持される結果、安定した強固なディスク構造に成形できることも判った。

得られた薄膜フィルムの機械的性質を調べた結果、弾性率は約12.7GPaで防弾ガラスの4~6倍、また降伏強度は約488MPaで鋼の2倍であることが確認された。材料密度が鋼の約1/6しかないので、強度対重量比が重要な多様な応用が可能になる。また、1次元分子鎖コイルを利用した従来のポリマーでは、コイル間の隙間を通して水分や気体が浸透するが、2次元ポリマーではこの浸透が完全に防止され、超薄い拡散バリア材料として自動車や鋼構造における金属を発錆などから保護するのに用いることができる。「自動車部品や携帯電話用に軽量で耐久性のあるコーティングとして、また橋梁や鋼構造用の建設材料として応用が可能」と、研究チームは期待する。現在、自己組織化の詳細メカニズムについて研究するとともに、分子構成の変更による他の革新的材料創成を追求する実験を行っている。

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