世界のパソコン(PC)出荷台数は低迷が続いているが、PCの買い替えサイクルや「AI PC」の台頭などのさまざまな要因により、2024年は回復に向かうだろう――。調査会社のIDCが2023年12月、このように分析するリリースを発表した。AI対応の機能を搭載したPCが法人の特定業務向けにまずは登場し、次第に用途を広げてコストが下がり、もっと幅広い市場へ浸透していくと見込んでいる。
IDCによれば、世界PC出荷台数は2021年の約3億4880万台から、2022年は約3億150万台、2023年は約2億5950万台と減少が続いている。しかし、同社グループバイスプレジデントのRyan Reith氏は「AIが明らかに関心の的となり、市販PCの買い替え需要によって2024年は好調な1年になる見通しだということを忘れてはいけない」と主張した。
実際、2024年1月9日から開催のテクノロジー展示会「CES 2024」においても、「AI PC」関連の製品が注目を集めている。
Intelは2023年12月、NPU「Intel AI Boost」を搭載したノートPC向けプロセッサー「Core Ultra」を正式に発表。Intel AI Boostは、CPUとGPUでのAI処理を補完することで長時間実行するAIワークロードを低消費電力で処理し、電力効率は従来比で2.5倍になる。AMDも同月、ノートPC向けプロセッサー「AMD Ryzen 8040」シリーズを発表。「Ryzen AI NPU」を半導体チップ上に統合し、AI処理性能を最大1.6倍向上させた。CESではPCメーカー各社がCore UltraやRyzen 8040を搭載するノートPCを披露している。
NVIDIAはCES開催に向けて、GPUファミリー「GeForce RTX 40 SUPER」シリーズを発表した。最大で52シェーダーTFLOPS、121 RT TFLOPS、836 AI TOPSの処理能力を備えた「AI Tensor」コアを搭載。高性能ディープラーニング推論用のソフトウェア開発キット(SDK)「NVIDIA TensorRT」はディープラーニング推論オプティマイザーとランタイムを含み、オープンソースライブラリ「TensorRT-LLM for Windows」は大規模言語モデルの推論パフォーマンスを高速化する。AIワークロードで見ると、GeForce RTX 4080 SUPERはRTX 3080 Tiと比べてビデオ生成が1.5倍以上高速になり、画像生成速度も1.7倍以上に。AIを活用したNVIDIA Deep Learning Super Sampling(DLSS)技術により、8ピクセルのうち7ピクセルをAI生成できるようになり、フルレイトレーシングが最大4倍高速化されて画質が向上するという。
MicrosoftもAIアシスタント「Copilot」を呼び出せる「Copilotキー」をWindows 11搭載PCのキーボード上に導入し、約30年ぶりにキーボードへ大きな変更を加える計画を明らかにした。
「AI PC」はIntelが提唱するコンセプト。インターネットを使用せずにAIサービスやアプリケーションを実行しエッジAIを実現できるPCを「AI PC」と呼称するのだという。
Intelは2025年までに1億台のPCへAI導入を目指す「AI PCアクセラレーション・プログラム」を2023年10月に開始した。中央演算処理装置(CPU)、グラフィックス・プロセシング・ユニット(GPU)、ニューラル・プロセシング・ユニット(NPU)といったアーキテクチャーを基盤にして、AIのパフォーマンスと電力効率の最適化を図る考えを示している。