温めるとどの方向にも同じ比率で縮む負熱膨張材料の開発に成功――体積変化量は最大4%超 名古屋大学

一硫化サマリウムのサマリウム原子の22%をイットリム原子で置き換えた物質の線熱膨張(左)、一硫化サマリウムの岩塩型結晶構造(右)

名古屋大学は2019年1月18日、温めると縮む新材料を開発したと発表した。どの方向にも同比率で伸び縮みする負熱膨張材料としては、最大の体積収縮量を持つという。

温めると縮む負熱膨張の性質を持つ材料は、熱膨張による歪を制御できる物質として注目されている。また、近年半導体デバイス製造などをはじめとする精密機器分野では、僅かな歪でも影響が大きいために、特に熱膨張の制御が強く求められるようになってきた。

そのような理由から、温めると縮むさまざまな負熱膨張材料が熱膨張を制御する材料として使用されてきたが、従来の材料は負熱膨張による体積変化が小さかったり、結晶の方向によって伸び縮みの比率が大きく異なるなどの問題があった。

今回の研究では、一硫化サマリウム(SmS)に含まれる希土類元素サマリウム(Sm)を、別の希土類元素イットリウム(Y)に20%程度置き換えることで体積変化量を大きくすることに成功した。

同研究では、Smに含まれる電子が入る電子配置によって、Sm原子の大きさが大きく変わる「原子内電荷移動」の現象に注目。一硫化サマリウムでは、2つの電子配置の安定度がほぼ同じであり、常温常圧の電子配置の状態から、小さな刺激や元素部分の置き換えによって電子配置を移動して、相転移することが知られていた。

今回、物質・材料研究機構が持つ高度な硫化化合物技術と、名古屋大学が持つ負熱膨張材料に関する知見、ノウハウを融合させることで一硫化サマリウムのサマリウムの一部をイットリウムに置き換えし、新材料の開発に成功。結晶のどの方向にも同比率でしかも大きく伸縮する負熱膨張材料を開発した。体積変化率は4%を超え、結晶の方向に左右されず伸縮する負熱膨張材料として最大となった。

今回の開発によって、精密機器の性能向上や長寿命化などが期待されるという。

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