- 2022-4-21
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- Mark Fannes, Physical Review Letters, Robert Alicki, グローバルオペレーション, 再生可能エネルギー, 基礎科学研究院(IBS), 学術, 量子もつれ, 量子バッテリー, 電気自動車(EV)
韓国の基礎科学研究院(IBS)の研究チームは、従来よりも効率的にバッテリーを充電できる「量子バッテリー」の実用化につながる手法を提案した。見積もりによると、自宅で約10時間かかる電気自動車(EV)の充電時間を3分に短縮できるという。EVだけでなく、民生品や核融合発電にも利用できる可能性がある。論文は2022年2月8日、『Physical Review Letters』に受理された。
限りある資源、増え続けるエネルギー消費量を考えると、遅かれ早かれ化石に代わる再生可能エネルギー源の開発は避けられない。再生可能エネルギーで動くデバイスや製品の普及も進み、中でもEV市場の成長は著しい。10年前には珍しかったEVは、今や年間数百万の売り上げを誇る。
初期のEVに搭載していたバッテリーは、化石燃料よりエネルギー密度が低く、走行距離がとても短かった。バッテリー技術が、EV革命における技術的ボトルネックの1つといっても過言ではない。バッテリー容量の拡大など技術の進歩とともに、ようやくガソリン車と比較できる走行レベルになってきた。その一方、EVは充電時間が長いという問題は、容易には解決しない。自宅ではフル充電に約10時間、充電スタンドの急速充電器でも20~40分かかっているのが現状だ。
2012年に「量子バッテリー」という概念を提唱したのが、Robert AlickiとMark Fannesだ。彼らは、「量子もつれ」などを利用してバッテリー内部のセル全てを同時に充電することで、充電スピードを劇的に改善できるという理論を立てた。こうした一括充電は、個々のセルを並列で充電する従来のバッテリーでは不可能だ。
IBSの研究チームは、この概念をさらに掘り下げ、量子バッテリーにおいては、全てのセルが他の全てのセルと同時に通信する「グローバルオペレーション」がカギだと示した。また、グローバルオペレーションの量子バッテリーは従来のバッテリーとは違い、充電速度がセルの数に対して2次関数的に増加すると定量化した。例えば、約200セルのバッテリーを備えたEVの場合、従来のバッテリーと比べて200倍速い充電が可能になり、自宅では10時間が約3分、高速充電スタンドでは30分が数秒に短縮すると予想される。
もちろん、量子技術はまだ初期段階で、実用化までの道のりはまだ遠い。しかし、量子バッテリーはさまざまな分野に影響を与え、持続可能な未来への可能性を示している。
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