- 2023-12-20
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東北大学は2023年12月19日、同大学大学院環境科学研究科と大阪工業大学工学部機械工学科の共同研究グループが、特定の方向に伸びやすい炭素繊維強化圧電プラスチックセンサを開発したと発表した。
スポーツ/レジャー製品やロボット、医療/介護用システム、航空/宇宙機器などの分野における、IoT(モノのインターネット)センサとしての応用に繋がることが期待される。
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、軽量で機械的安定性にも優れるため、航空/宇宙機器、船舶、自動車などさまざまな分野で用いられている。
また、圧電プラスチックは機械エネルギーを電気エネルギーに変換可能で、振動発電機能やセンシング機能を持たせられるため、人体モーションセンシングシステム向けのバッテリー不要素材として注目されている。
一方で、圧電プラスチックは一般的に機械的強度が低いため、センサとしての応用範囲が限られることが課題となっていた。
今回開発した一方向炭素繊維強化圧電複合材料では、圧電ナノ粒子(ニオブ酸カリウムナトリウム:KNN)をプラスチック(エポキシ樹脂)に分散した2枚の圧電ナノコンポジットシートを用いた。これらの界面に炭素繊維を一方向に配向させ、2枚を接合して一体化させることで、CFRPを電極および補強材としている。
同材料では、圧電性を損なわずに、繊維方向に優れた縦弾性係数および引張強度を得ており、繊維の垂直方向によく伸びてセンサの性能が向上した。
加えて同研究チームは、実験結果を再現するマルチスケール・マルチフィジックス有限要素モデルを開発した。
圧電ナノ粒子がプラスチックに均一分散しているモデルを用いて、圧電ナノコンポジットの電気力学特性を予測。同特性を適用することで、圧電CFRPユニットセルの異方性電気力学特性を得ている。
得た値を3層のサンドイッチ構造に用いることで、炭素繊維強化圧電複合材料の応力状態や変形挙動、出力電圧の予測が可能となる。これにより、理論モデル解析からも実験結果の妥当性を確認した。
今回作製した材料の引張試験を行ったところ、縦弾性係数が配向させた繊維方向(x方向)に大きく(伸びにくい)、繊維の垂直方向(y方向)に小さくなり(伸びやすい)、実験結果と解析結果がよく一致することが確かめられた。
また、x方向とy方向に50Nの荷重を繰り返し負荷したところ、伸びやすい方向の出力電圧が、強度が高い繊維方向に比べて20倍以上となることが判明した。
さらに、野球のグローブに同材料を用いて、繊維方向と指の方向を一致させて柔軟性を確保したところ、ボールをキャッチしたときに約2Vの電圧を出力した。キャッチするタイミングは、信号の振幅スペクトログラムにより正確に決定できる。
また、右靴に同材料を取り付けて歩行をセンシングした。左足を踏み出す際に人体の重心が右足に移動し、外力が変化して電圧を出力するため、右靴に取り付けた1つのセンサで両足の動きを感知することが可能となっている。
歩き始めると、約3Vの電圧を出力した。また、高速フーリエ変換(FFT) スペクトル分析により、被験者のステップ周波数が0.76Hzであることも判明している。振幅スペクトログラムから、左右の脚の歩行パターンのタイミングも分析できる。
今回開発した材料は出力が安定しているため、人体に加えてロボットや移動体のモーション検出への適用も期待される。
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