伝統工芸「切り紙」の応用で温度制御する手法を開発 物質・材料研究機構

物質・材料研究機構(NIMS)は2022年4月22日、日本の伝統工芸として知られる「切り紙」から着想を得た加工によって、身近なプラスチックを局所的な加熱/冷却素子として温度制御に利用する手法を開発したと発表した。研究成果は4月19日、ドイツ国際科学誌「Advanced Functional Materials」にオンライン掲載された。

同機構は、切り紙加工によって、非常に小さな引張応力で任意の場所に大きな内部応力が集中的に発生することに着目。物質に切り込みを入れれば、伸び縮みさせることで吸発熱が生じる弾性熱量効果を高められるのではないかと考えた。

実験の結果、これまで弾性熱量効果の温度変調材料としては全く着目されていなかった身近なプラスチック材料の局所加熱/冷却能が大幅に向上することを確認。その値は、これまで弾性熱量効果が最も高いとされてきた形状記憶合金を上回った。

温度制御はエアコンや冷蔵庫など身近な家電にも使われる技術だが、現在はフロンなどの冷媒ガスの圧縮を利用して冷却している。しかし、フロンなどは環境負荷が大きいうえ、集積化された電子機器に対するピンポイントな温度制御には向いていないという欠点がある。

冷媒ガスの代替技術として、物質を伸び縮みさせることで吸発熱が生じる弾性熱量効果が注目されているが、ほとんどの物質は効果が小さく、実用化に足るほどの大きな加熱/冷却能を持つ物質は少ない。現在、実用化に有望な物質は、形状記憶合金と考えられており、より高効率な合金の研究が進められている。

しかし、切り紙加工による弾性熱量効果が有効なら、プラスチック以外のさまざまな物質も加工を施すことで活用できるようになり、多様な加工パターンも考えられる。伸縮性やフレキシビリティも大幅に向上でき、さまざまな場所への取り付けも可能になる。

同機構では「今後、弾性熱量効果による温度変調に最適な加工パターンや物質の選定を進めることで、電子機器の温度制御や曲面などにも取り付け可能なフレキシブルな温度変調素子開発への展開を目指す」としている。

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