太陽エネルギーを液体に長期保存――分子式太陽熱システムを開発

スウェーデンのチャルマース大学の研究チームは、太陽エネルギーを液体の状態で18年間貯蔵できる分子式太陽熱システム(MOST:Molecular Solar Thermal system)を開発した。中国の上海大学と共同で、MOSTと超小型の熱電発電機を組み合わせることにより、スウェーデンで貯蔵した太陽エネルギーを中国で電気に変換することに成功した。研究成果は、『Cell Reports Physical Science』誌に2022年4月1日付で公開されている。

このシステムは、炭素、水素、窒素で構成される独自に開発した分子が用いられている。この分子に太陽光が当たると、分子内の原子が再配列してエネルギー豊富な異性体となり、液体の状態で太陽エネルギーが貯蔵される。エネルギーを取り出す際は、特殊な触媒を使用して分子を元の原子配列に戻し、エネルギーを熱として放出する。

チャルマース大学の研究チームは10年以上この技術の開発に取り組んできたが、今回上海交通大学と共同で、熱電発電機と組み合わせることで電気に変換することに成功した。この熱電発電機は超薄型のチップで、ヘッドフォンやスマートウォッチ、スマートフォンなどの電子機器に組み込むことができるという。将来的には、蓄積した太陽エネルギーを使い必要に応じて自己充電できる電子機器が誕生するかもしれない。

今回の実験で生成した電気は0.1nWと少量であったが、MOSTと熱電発電機の組み合わせが機能することは実証できた。このことは、天候や時間帯、季節、地理的位置に関係なく、太陽エネルギーを使って二酸化炭素を排出することなく電気を作れることを意味する。

実用化のためには多くの課題が残っており、現在研究チームは、生産コストに見合うだけの電気や熱を取り出せるようにシステムの効率化に取り組んでいる。

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