リチウム金属などの針状析出発生抑制に成功――金属負極電池の実用化に向けた重要な一歩 東北大学

東北大学は2022年5月19日、アルカリ負極蓄電池の実現に向け、リチウム金属などの針状析出の発生を抑えることに成功したと発表した。

炭素系負極(グラファイト)と遷移金属酸化物正極を使用したリチウムイオン電池は、理論上すでに蓄電容量が限界に達している。負極をグラファイトなどのリチウムイオンを収納するフレーム構造とする材料ではなく、リチウム原子のみで構成する金属負極を用いることができれば、負極の理論容量を10倍に高めることができる。

しかし、リチウム金属は析出する際に電極表面付近の濃度や電場分布の変動の影響を受けて、針状の樹枝状結晶(デンドライト)を形成しやすい。デンドライトは剥離しやすく、剥離した微細な結晶が電極間を貫通して内部短絡を起こしたり、電池容量を著しく低下させるという問題があった。

今回の研究では、リチウム塩やナトリウム塩を含む電解液に、マグネシウムやカリウム、バリウムのアルカリ土類金属塩を添加。電析実験を実施した。その結果、リチウムやナトリウム金属の析出形態が明らかに平坦になることを発見した。これは、アルカリ土類金属塩添加によって一価カチオン(陽イオン)の溶媒和構造が改変されて、リチウムやナトリウム金属析出の活性化過程が制御されることで、平坦な析出形態を維持できるためだ。

今回の研究は、多価カチオン塩を添付剤とすることで、リチウムなどの金属負極の反応速度と析出形態を制御できることを実証。金属負極電池の実用化に向けた成果となった。今後は添加元素やアニオン溶媒の配合の最適化と、金属負極電池のサイクル寿命や出力特性の向上に取り組む。

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