ペットボトルを1週間で分解――プラごみの環境問題を解決するプラスチック分解酵素を発見

廃棄されるプラスチックによる環境汚染は、世界が抱える大きな課題の一つだ。ほとんどのプラスチックは生分解性を持たないため、分解されることなく環境中に長期間とどまり、海洋などを中心に汚染し続けている。またプラスチックゴミ問題の解決にはリサイクルが有用だが、世界でリサイクルされているプラスチックは全体の10%にも満たない。

テキサス大学オースティン校の研究チームは、プラスチックゴミ問題を解決する可能性を持つ革新的な手法を開発した。通常は何百年もかかって分解されるプラスチックをわずか数時間から数日間で分解する酵素を、天然のプラスチック分解酵素を元に作製したもので、研究成果は『Nature』誌に2022年4月27日付で公開されている。

今回の研究で対象としたポリエチレンテレフタレート(PET)は、食品容器や飲料のペットボトル、ある種の繊維など多くの製品に用いられているプラスチックの一種で、世界の固形廃棄物の12%を占めると言われている。PETは理論的には、酵素による分解と再合成により他の製品に転換することができる。しかし、PET分解酵素はpHや温度の変化に弱く、反応速度が遅いことなどから、その応用は進んでいなかった。

今回研究チームは、機械学習モデルを利用して、自然界に存在するバクテリアが産生するPET分解酵素「PETase」のうち、どの酵素のどこに変異を入れれば、低温で素早くPETを分解するようになるかを予測し、それに従い新たな酵素の変種を作製した。この酵素は、30〜50℃以下で素早くPETをモノマーまで分解することが可能で、条件によっては24時間程度で完全にモノマーまで分解できるという。

FAST-PETase(functional, active, stable and tolerant PETase)と名付けられたこの新規酵素を51種類のプラスチック容器に作用させると、1週間でほぼ完全に分解することができた。また市販の飲料水ペットボトルに用いると、未処理のペットボトルではA-PET(アモルファスPET)部分を、熱処理後は全体を50℃で分解できた。

また、FAST-PETaseにより生成したモノマーは、再重合により新たなPETを合成できることが示され、完全にクローズドループなリサイクルプロセスが可能であることが実証された。

研究チームは今後、酵素の生産規模を拡大し、産業や環境への応用に備える予定だ。廃プラスチック埋立地や廃棄物を多く出す産業での利用のほか、環境修復への応用も検討している。

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