トカマク炉内部の核融合を3Dで視覚化するシステムを開発

© 2024 EPFL / Laboratory for Experimental Museology (EM+) - CC-BY-SA 4.0

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)は2024年7月17日、核融合の予備プロセスのための高度な可視化システムを開発したと発表した。

核融合は、2つの原子核が融合してより重い原子核に変わる反応で、反応の過程で膨大なエネルギーを放出する。この核融合反応を制御しながら行うためには、巨大なドーナツ状のコイルによって強力な磁場を発生させ、蜂の大群のように飛び回るプラズマを閉じ込める必要がある。EPFLの実験博物館学研究所(EM+)が開発したリアルな3D可視化技術を活用することで、トカマクと呼ばれるこの仕組みのライブシミュレーションができるようになった。科学者にとっては量子物理学の複雑な現象を目の当たりにし、計算結果を把握するのに役立つ貴重なツールだ。

高さ4m、直径10mのドーナツ型コイルの3Dパノラマ映像は、EM+がロボットを使って可変型トカマク(TCV)装置の内部を超高精度でスキャンしたもので、内部を忠実に再現している。この3Dモデルデータと、EPFLのスイス・プラズマ・センター(SPC)のエンジニアが提供した、ある時点での量子粒子の動きを正確に計算する方程式を、可視化システムに組み込んだ。

しかし、SPCが実施するトカマクシミュレーションと、試験から生成されるテラバイト級のデータの計算をリアルタイムで行わなければならないことは、大きな問題だった。EM+をまとめるSarah Kenderdine教授は、最大の課題は「このような巨大なデータベースから具体的な情報を抽出し、正確で一貫性を持たせつつリアルに視覚化すること」だったと述べている。EM+のコンピューター技術者であるSamy Mannane氏も、「1枚の画像を生成するために、システムは何千もの移動粒子の軌跡を毎秒60回の速度で計算しなければならない」と語っている。

この膨大な計算を、それぞれ2つのGPUを搭載した5台のコンピューターが処理し、5台の4Kプロジェクターに送る仕組みを採用した結果、驚くほど質の高いリアルな画像が生まれ、TCVに粒子を注入する装置や1億度以上の温度に耐えるグラファイトタイルも見られるようになった。また、ユーザーはパラメーターを調整し、原子炉の特定の部分を任意の角度からほぼ完璧なレンダリングで見ることができる。

SPCディレクターのPaolo Ricci氏は「可視化プロセスの背後にある物理学は非常に複雑だ。トカマクには不均一な挙動を示す粒子、磁場、プラズマを加熱する波、外部から注入される粒子、ガスなど、さまざまな変動する要素がある。物理学者でさえすべてを整理するのは難しい。EM+が開発したシステムは、シミュレーションプログラムの標準的な出力(基本的には数字の表)と、研究室で使われているリアルタイム可視化技術を組み合わせたものだ」と説明している。

関連情報

3D visualization brings nuclear fusion to life – EPFL

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