ヘアブラッシングのコツを数学的に理解する――髪のもつれをほぐす最適な方法、織物製造やロボット美容師などに応用可能

「絡まった髪をとかしてほぐすこと」について数学的理解を進展させた研究が発表された。これは織物製造やロボット美容師などに応用できる可能性があるものだ。この研究は米ハーバード大学によるもので、2022年3月22日付で『Soft Matter』に掲載された。

長い髪をブラッシングしたことがある人なら誰でも知っているように、絡まった髪の毛は悪夢だ。しかし、十分な経験を積めば、ほとんどの人が最小限の痛みで髪の毛のもつれをほぐすコツが分かる。髪の毛の毛先からとかし始めて、頭皮に向かって短く優しくブラシをかけていくのだ。また、必要に応じて、もつれた髪のくし通りを良くするデタングリングスプレーを使用することもある。

「デタングリング」と呼ばれる、もつれた髪をほどくことのトポロジー、幾何学、力学は、織物製造や、ポリマー加工のような化学プロセスなどさまざまな用途に関連する興味深い数学的問題を提起する。

今回の研究では、くしでとかすことに関する数学を探究し、これまでに述べたようなブラッシング技術が、なぜもつれた細長い繊維状の物の束をほどくのに最も有効な方法であるのかを説明した。

この問題を単純化するため、研究チームは、頭全体の髪の毛ではなくらせん状に絡み合った2本の繊維を用い、くしでとかすことに関連する力と変形を測定し、それを数値的にシミュレートした。このような最小モデルを使うことで、二重らせんのデタングリングを研究することができる。このモデルでは、1本の硬いくしの歯が、らせんに沿って移動し、移動した後にほどけた2本の繊維を残していく。

ゆわえられていない側の端から始めて、締め付けられた端に向かって短く動かすと、互いに編み込まれた髪の毛の量を特徴付ける「リンク密度」と呼ばれる数学量の流れが作り出され、もつれが取り除かれるが、これは一連の過程のシミュレーションと一致している。

さらに、今回の研究では、とかす際に1回に動かす最適な長さも特定した。この長さより短いと、全ての髪の絡まりをくしでとかし終えるまでに時間がかかり、かといって、長くすると絡まりに引っかかって感じる痛みが強くなってしまう。

研究チームが開発したブラッシングの数学的原理は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが髪をとかすロボットのアルゴリズム設計に利用している。

今後、研究チームは、よりカールした巻き毛のブラッシング方法と、そのような髪の毛が湿度や温度に対してどのように反応するかを研究することを目指す。これは、巻き毛の髪の人なら誰でも知っている「乾いた髪にブラシをかけてはいけない」という事実を数学的に理解することにつながるかもしれないという。

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