- 2022-10-29
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- Forever Chemicals(永久に残る化学物質), PFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物), Science, テフロン加工, ノースウェスタン大学, 学術, 有機フッ素化合物, 食品パッケージ
PFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)と総称される有機フッ素化合物の一群は、自然界では非常に分解されにくいため「Forever Chemicals(永久に残る化学物質)」とも呼ばれ、欧米では特に問題となっている。そのPFASをノースウェスタン大学の研究チームが安価な試薬を用いて比較的低温で分解する方法を発見した。研究成果は『Science』誌に2022年8月18日付で公開されている。
PFASは1950年代から使用されており、撥水性や撥油性に優れ、汚れがこびりつきにくいため、テフロン加工のフライパンや、ファストフードやお菓子などの食品パッケージに用いられている。またシャンプーや化粧品などのケア用品や塗料、消火器の泡消火薬剤などにも含まれている。
PFASの健康への影響は完全には解明されていないが、免疫力の低下やホルモンの乱れ、甲状腺機能障害、ある種のがんに対するリスク増加などとの関連が指摘されている。また、子どもの成長や学習行動、女性の妊娠にも影響する可能性が示されている。アメリカでは1万2000種類以上の化合物をPFASと認定している。ほとんどが未調査ではあるものの有害の可能性があるとされており、PFAS規制は強まっている。
PFASの難分解性は、最も強い化学結合の1つである炭素―フッ素を含むことに由来する。ほとんどの生物学的、化学的分解メカニズムに対して耐性があるため、分解されることなく体内や自然界に蓄積されていく。汚染された水を飲んだりPFASを含む製品を利用したりすることで体内にも取り込まれるが、体内のPFASは濃度が半分になる半減期が4年と言われている。
これまでPFASは、過酷な条件下でしか分解できないと考えられてきた。しかしノースウェスタン大学の研究チームは、カルボン酸含有PFASが水酸化ナトリウムを介した脱フッ素化経路により無機化できることを発見した。極性のある非プロトン性溶媒中でPFASを脱炭酸すると、反応性の高い中間体を生成し24時間以内にフッ化物イオンに分解する。分解度は78〜100%だ。
この反応で生じる中間体や生成物は、これまで提案されてきた炭素鎖短縮化メカニズムと異なっている。現段階では、ペルフルオロアルキル化合物に対してのみ分解が可能だが、さらに研究が進むことで他の種類のPFAS分解も可能だと考えられている。