世界で最も白い塗料の開発――薄くて軽いナノポーラス塗装による放射冷却

Photo credit: Unsplash/Ern Low

米パデュー大学の研究チームが、薄くて軽い放射冷却塗料を開発した。同塗料は、今年のギネスワールドレコーズで「世界で最も白い塗料」として紹介され、自動車や電車、飛行機などの冷却塗料に最適である。

同研究成果は2022年10月3日、「Cell Reports Physical Science」誌に掲載された。

硫酸バリウムのナノ粒子を使った、従来の白い塗料は、太陽光を98.1%反射し、屋外の表面を外気温より4.5℃以上低くできる。しかし、外気温以下に放射冷却するためには、塗料の厚さを少なくとも400µmにする必要がある。同条件は、ビルの屋根のような丈夫な構造物の塗装には十分だが、自動車や飛行機などのような、サイズと重量に正確な要件が求められる用途には、不十分であった。

そこで研究チームは、潤滑剤などに使われる六方晶窒化ホウ素を色素として取り込んだナノポーラス塗料を開発した。同塗料は、わずか150µmの厚さで、基準を満たす97.9%の太陽光反射率を達成した。屋外試験では、サンプル表面で外気温より平均5〜6℃の冷却が確認された。

六方晶窒化ホウ素は、高い屈折率を持っているため、太陽光を強く散乱する。同塗料の粒子は、ナノプレートレットと呼ばれる独特な形状をしており、従来の冷却塗料に含まれる球状の粒子よりも、効率よく太陽光を反射すると、コンピュータシミュレーションにより示された。

また、同塗料はナノメートルサイズの高い多孔性を持っている。この低密度と薄さは、軽量化というもう1つの大きなメリットをもたらした。同塗料は、従来の硫酸バリウム塗料に比べて、80%も軽い。

「世界で最も白い塗料」は、従来の塗料よりも軽いにもかかわらず、世界最高クラスの太陽光反射率を維持し、さらに、業界標準の耐摩耗性と粘性、耐水性を有している。パデュー大学のXiulin Ruan教授は、「懸案事項がいくつか残っていますが、商品化に向けて進めているところです」と述べた。

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