超音速の弾丸を捕獲/保存できるタンパク質ベースの衝撃吸収材を開発

英ケント大学の研究チームが、タンパク質ベースの新しい衝撃吸収材を開発した。同材料は、超音速の弾丸の衝撃を吸収でき、宇宙や高層大気における超音速衝突の研究を可能にする。

同研究成果は2022年11月29日、生物学のプレプリントサーバー「bioRxiv」に掲載された。

研究チームは、自然に存在する細胞の衝撃吸収材であるタリンと呼ばれるタンパク質に着目した。そして、張力下ではタリンが開き、非張力下では再び折りたたまれる、分子レベルの機械応答を明らかにした。この機械応答は、衝撃吸収特性をもたらし、大きな力変化の影響から細胞を守っている。そこで、研究チームは、タリンの組換え体を単量体単位に組み込んで架橋したハイドロゲルを合成し、タリン衝撃吸収材(TSAM)と名付けた。

さらに研究チームは、このハイドロゲル材料に秒速1.5kmの超音速衝撃を与え、TSAMが衝撃を吸収するだけでなく、弾丸を捕獲/保存することを示した。これは、宇宙空間にある粒子が自然物や人工物に衝突する速度や通常の銃口での弾丸速度よりも速い速度だ。

現在の防弾チョッキには、繊維強化複合材で裏打ちしたセラミック板が使用されることが多く、重くて扱いにくいという欠点がある。さらに、衝撃を受けると不可逆的に損傷することが多く、再使用できない。防弾チョッキにTSAMを組み込めれば、より軽量で長持ちする防弾服として、より広範囲の傷害から着用者を保護できるとのことだ。

また、TSAMの捕獲/保存能力は、宇宙ゴミや宇宙塵、流星塵の効率的な捕集を可能にする。捕集した飛散物からの情報は、国際宇宙ステーションをはじめとする航空宇宙機器の局所環境の理解に役立つ。

ケント大学のJennifer Hiscock教授は、「基礎生物学と化学、材料科学の学際的協力により、本材料を開発することができました。今後、防衛/航空宇宙分野の新たな協力者の支援を受けながら、さらに研究を進めていきます」と説明した。

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