次世代型オイルレス冷熱ORCタービン発電機で、液体窒素を使用した冷熱発電実証試験に成功 三菱重工ら

三菱重工業、三菱重工グループの三菱重工マリンマシナリは2023年2月28日、世界初の「次世代型オイルレス冷熱ORCタービン発電機」による100kW級冷熱ORC発電実証試験に成功したと発表した。同発電機は、冷熱発電向けに、ORC(Organic Rankine Cycle:有機ランキンサイクル)発電で用いられる完全密閉型オイルレス構造のタービン発電機を応用している。

今回の実証実験により、冷熱発電の冷熱エネルギー源として液体窒素を使用することで、通常のLNG冷熱発電に比べてさらに低温の厳しい条件下でも、凍結による閉塞などを生じずに冷媒サイクルの安定性や所定の回生出力が得られることを証明した。

実証実験は、2023年1月に三菱重工総合研究所(長崎地区)で実施した。冷熱発電は、冷熱エネルギーを利用した中間媒体ランキンサイクル方式によるものを採用。通常はLNG(沸点:およそ一160℃)が用いられるところ、液体窒素(沸点:およそー196℃)を使用している。その他、船舶用FGSS(燃料ガス供給システム)や、洋上、陸上のLNG気化設備といった実際のLNG気化設備をシミュレーションした。

100kW級冷熱ORC発電実証試験設備

この実証実験の結果、LNGや液体窒素などの極低温媒体の相変化や、冷媒サイクル特性の把握、制御性の確認ができた。こうしたことから、さらなるLNG冷熱発電システムの安定化と、信頼性向上が見込める。また、脱炭素燃料として有望視されている水素(沸点:およそー253℃)の冷熱発電への応用などが期待できる。

同発電機は、独自に開発しており、冷媒を系統の外に漏洩させない気密封止構造(ハーメチック構造)や、オイルレス磁気軸受を採用している。冷熱発電向けに改良し、LNG冷熱発電で使用されるこれまでのタービン構造(軸貫通部のある蒸気タービン型で、軸受が強制給油スリーブ軸受である点)と比べ、高い信頼性、省スペース性を有し、メンテナンスフリーという特長を持つ。

LNG気化設備における冷熱ORC発電システム

今後、未利用の冷熱、排熱を有効活用する新たな発電事業の創出を目指す。また、温室効果ガス排出削減、環境保護に寄与するソリューションの開発を進めていく。

関連情報

三菱重工 | 「次世代型オイルレス冷熱ORCタービン発電機」による窒素冷熱発電に成功 ORC発電向けタービンの完全密閉型オイルレス構造を冷熱発電向けに応用

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る