ミシガン工科大学の研究チームが、低温作動が可能な固体酸化物燃料電池を開発

ミシガン工科大学の研究チームが、固体酸化物燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)において耐久性や構成材料の劣化の原因になっている800℃以上の高い作動温度を、550℃以下に低下させることに成功した。サマリウムをドープした酸化セリウムの多孔性電解質の界面に、超構造炭酸塩を自発形成させることにより、低温においても酸素イオンの伝導度を大幅に向上。燃料電池として充分な性能を確保するとともに、高い耐久性や安全性を実現した。燃料として水素以外に、メタンなどの炭化水素を用いることもできる。研究成果が、2022年10月3日に『National Academy of Sciences』誌に論文公開されている。

SOFCは、電解質として固体セラミックスを用いる燃料電池だ。発電効率が高く、水素だけでなくメタンや一酸化炭素などの炭化水素燃料を直接用いることができる。だが、電解質における酸素イオンの伝導度を確保するために、作動温度を800℃以上とする必要がある。

この高い作動温度によって、デバイスとしての耐久性や構成材料の劣化が生じ、スタック全体を大型化したり、耐久性の高い高価な材料を使用したりする必要がある。作動温度を下げると酸素イオン伝導度が低下し、作動時間とともに電極に炭素が堆積するコーキングを生じて、燃料電池としての性能を劣化させる。これを解決するため、電池性能を損なうことなく、作動温度を低下させる手法の開発が求められている。

研究チームは作動温度を下げるため、電極と電解質の界面に炭酸塩の「超構造」を形成させることに着眼した。一般に結晶表面では、内部と異なった結晶構造である超構造が自発的に形成されるが、超伝導や触媒機能など結晶自体にはない特異な性質を示すことが見出されている。研究チームは、サマリウムをドープした酸化セリウムの多孔性電解質の界面に超構造炭酸塩を形成させた結果、550℃の低温においても酸素イオン伝導度を0.17S/cmと極めて高くすることに成功した。メタン燃料を用いた場合、閉回路電圧について、これまでにない高い1.041Vを実現し、電流漏れ損失を抑えて高いエネルギー変換効率を達成できる。更に、乾性メタン燃料を用いることにより、SOFCでは過去最高の、極めて高いピーク電力密度215mW/cm2を得ることを確認した。

作動温度の低い炭酸塩超構造固体燃料電池(CSSFC)の開発により、発電効率の向上および燃料電池セル製作コストの低下を実現できるとともに、他のSOFCに比べてより安全に稼働できる。一般的な内燃エンジンの燃料効率が30~35%であるのに対し、CSSFCの効率は60%に達すると推定されている。またコストのかかる水素への改質プロセスなしに、メタンなどさまざまな炭化水素燃料を直接使えるため、自動車や発電などでの実用化とCO2排出削減に貢献できると、研究チームは期待する。

関連情報

An Energy Breakthrough: Tech Researchers Create New Type of Fuel Cell | Michigan Tech News

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