身近な素材で生分解性の人工筋肉を開発――パワードスーツの動力源もイメージ

Credit: Max Planck Institute for Intelligent Systems

使用後に廃棄して分解されるという、新しい種類のロボットアクチュエーター、つまり「人工筋肉」が開発された。この成果は、マックスプランク知能システム研究所を中心としたグループが、2023年3月22日付の『Science Advances』誌のなかで発表した。

人工筋肉に関する過去の研究は、2018年に「Hydraulically Amplified Self-healing Electrostatic(HASEL)」の名称を持つ、アクチュエーターの技術が発表されている。この技術は、人間の筋肉のような動作を模倣し、ロボットアームを上腕二頭筋のように曲げたり、ロボットハンドの先端に装着した爪やグリッパーを握ったりする。

HASELアクチュエーターの主な構造は、柔らかいプラスチック製の小袋に、変圧器等にも使用する絶縁性のオイルを封入したもので、小袋の一部は導電体の薄い層が覆っている。

小袋を覆う導電体に電流を流すと、小袋の一部が収縮する。収縮によって封入されたオイルが一方の端から他方に絞り出された結果、小袋の形状が変化する。この変形による力で、ロボットの腕や脚のような機械部品を駆動する。

本研究の特徴は、従来のアクチュエーターには無かった「生分解性」だ。持続可能な材料で機構を構成し、生分解性を備えた「ソフトロボットアクチュエーター」の開発を目指した。

研究チームはまず、初期の設計のあらゆる部分を代替できる、持続可能な素材を探した。アクチュエーターのうち、プラスチック製の小袋の代替品には生分解性の素材を試験した。有力な選択肢の1つとして、ショッピングバッグにも使われる「生分解性ポリエステル混合物」が適していることを発見した。

個々の部品の素材を探索した結果、新しいアクチュエーターは、フィルム、オイル、ゼラチンベースの電極など、いずれも生分解性の素材で構成することに成功した。

最新の設計では、従来(非生分解性)のHASELアクチュエーターの主要な性能指標に匹敵し、同程度の範囲の用途に対応するという。耐久性は、条件により10万サイクル以上の動作に耐える可能性があるとしている。

研究チームによると、この技術が持つ持続可能性は、例えば、食品の取り扱いや医療分野など、また期間も単発から一定期間の使用に対応するなど、さまざまな用途を期待しているという。

同研究所の所長であるChristoph Keplinger氏の説明によれば、例えば将来、HASELアクチュエーターが映画アイアンマンなどに登場する「パワードスーツ」のような機器を駆動し、麻痺した人の歩行を支援するという。

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