- 2022-9-15
- 技術ニュース, 機械系
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高輝度光科学研究センター、北海道大学、理化学研究所を中心とする共同研究グループは2022年9月13日、X線自由電子レーザー施設SACLAにて、原子レベルの精度をもつ集光ミラー(反射鏡)により超高強度X線ビームを生み出し、世界最高分解能の超高速のX線フラッシュ顕微鏡を実現したと発表した。既に研究が機能性材料の観察へ展開されている。
研究は、原子レベルの精度を持つ超高精度X線集光ミラーの作製上の技術的な課題を解決して、X線集光ミラーを開発し、100nmの小さなサイズにX線自由電子レーザー(XFEL)を集めた超高強度ビームを開発し、これを用いたX線フラッシュ顕微鏡の分解能を高めることを目的としている。
研究グループは、多層膜集光ミラーを開発し、高圧縮率(高増幅率)で高効率にX線を集光できるようにし、従来の超精密加工技術に加え、新たな高精度表面形状計測装置を開発。楕円形状の反射面を持つX線集光ミラーをこれらを用いて作製した。
さらに、SACLAにて、開発した多層膜集光ミラー搭載のX線フラッシュ顕微鏡を開発。形成した集光ビームを多層膜ミラーで評価したところ、110×60nmという理論通りの集光サイズをもつ超高強度ビームを達成した。
これにより集光前と比べXFELの光子密度は、200万倍に増強。SACLAでX線フラッシュ顕微鏡に従来用いられてきた1μm集光ビームと比べ、光子密度50倍を達成している。
開発した超高強度ビームを利用したX線フラッシュ顕微鏡で、XFELを水中の金の微粒子に1ショットあてて超高速で観察したところ、分解能を更新。これまでの1ショットの観察によるX線フラッシュ顕微鏡の分解能は10nm弱だったが、世界に先駆けて2nmの超高分解能を達成した。
また、生体試料の観察にも発展できる水中では、XFEL観察で材料が変化する前に、超高速フラッシュを用いて超高分解能観察することに成功した。材料の「ありのままの姿」を観察しており、これは微粒子の構造と機能との関係を解き明かす重要な情報を示している。
この研究で開発した顕微鏡を用いた研究が、既に生体試料や機能性材料の観察へ展開されている。SACLAの実験者に、SACLAと最先端の超精密生産技術を駆使して開発された顕微鏡が提供され、新たな最先端の研究分野を推進している点がこの研究の意義となる。
開発した顕微鏡で、今までに観たことがなかった試料の「ありのままの姿」の超高分解能かつ超高速観察ができる。今後、医薬品や革新的電池の開発等への活用が期待される。