大腸菌を99.9%減少させ、流出オイルを吸収する「スーパーフォーム」を発明

ジョージア大学の研究チームは、「スーパーフォーム」と呼ばれる汎用性の高い発泡素材を開発した。埋め込み型医療機器による感染の低減や、石油流出などの環境災害への応用が期待できる。研究成果は、『ACS Applied Materials & Interfaces』誌に2023年1月26日付で公開されている。

研究チームが「スポンジ状のスイスアーミーナイフ(多機能ナイフ)のようだ」と例える多孔質3次元フォームの新素材は、撥水性があり血液や微生物、タンパク質をはじくだけでなく、抗菌性や油水分離性も有する。

論文の責任著者であるジョージア大学のHitesh Handa准教授は、「多機能で汎用性の高い表面を作ることは非常に難しい課題です。抗菌性しか持たない表面もあれば血液凝固を防ぐことしかできない表面もある。抗菌性、抗凝固性、防汚性を兼ね備えた材料を作製することは、現在の基準を大幅に改善することになります」と述べている。

スーパーフォームは、粗い発泡体であるポリジメチルシロキサン(PDMS)骨格に、疎水性の導電性グラフェンナノプレートレットと疎水性で殺菌力のある銅微粒子を添加したものだ。

細菌を用いた実験では、単純なポリマーと比較してスーパーフォームは大腸菌を99.9%減少させることが明らかになった。スーパーフォームを利用すれば、埋め込み型医療機器による医療関連感染を減少できる可能性がある。

「現在の医療機器は汚染されやすいです。医療機器を体内に入れるとまずタンパク質が付着し、それが糊のように働いて血液や細菌が付着します。そのため、タンパク質の吸着を防ぐことができれば、戦いの半分に勝ったようなもの」と、Handa氏は言う。

また、その他の実験からもこの素材が汚染物質を分離する能力が高いことが示された。スーパーフォームで作製した3Dスポンジを、水とクロロホルムや塩酸、その他有機物質との混合液に入れたところ、水中の有機汚染物質を吸着、除去できた。さらに水中の細菌を死滅させることも確認した。

研究チームの今後の主な目標は、この素材を医療機器に応用し、有効性を実証してから動物実験、ヒトでの試験に進めることだ。また、安全基準が比較的厳しくない環境浄化の分野への応用もできるかもしれない。

関連情報

Researchers create antimicrobial ‘superfoam’ | EurekAlert!
Superhydrophobic and Conductive Foams with Antifouling and Oil–Water Separation Properties | ACS Applied Materials & Interfaces

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