ハイエントロピー合金で電極触媒性能の飛躍的向上に成功 東北大学

東北大学は2023年7月28日、燃料電池の電極触媒材料としてハイエントロピー合金を用いることで、性能を飛躍的に向上させることに成功したと発表した。高性能な自動車用燃料電池触媒の開発につながることが期待され、研究成果は7月26日、科学誌「Nature Communications」にオンライン掲載された。

燃料電池用触媒には白金(Pt)とコバルト(Co)などの遷移金属を合金化した触媒が既に実用化され、活性の面では白金に比べて高い特性を示している。しかし、Pt-Co合金触媒は、燃料電池発電時の強酸性で電位変動が激しい環境ではCoが酸化溶出してしまい、耐久性が課題となっている。

東北大学と産業技術総合研究所の研究グループは、活性と耐久性を両立する物質として、5元素種が混合したハイエントロピー合金(HEA)を白金と合金化させた白金-ハイエントロピー合金(Pt-HEA)に着目。アークプラズマ蒸着法と呼ばれる真空蒸着法の一種を用いて、Pt-HEAの表面近傍の構成元素分布や最表面原子構造を原子レベルで制御したモデル触媒表面を作製。表面ミクロ構造がORR特性(活性、耐久性)に及ぼす影響を調査し、ORR特性向上メカニズムを解明するHEA電極触媒の実験研究プラットフォームを構築した。

さらに、このプラットフォームを用いて、作製および評価したPt-HEA単結晶表面の表面ミクロ構造とORR特性との関係性を検討した結果、Pt-HEA合金が従来のPt-Co合金をはるかに上回るORR特性を示すことを実験的に明らかにした。

研究グループは、Pt-HEA合金の特性がPt-Co合金に比べて大幅に向上することと、その触媒特性向上メカニズムを原子レベルで初めて解明したとし、今後さらに触媒の原子およびナノ構造を精緻に制御することで、高性能な自動車用燃料電池触媒の開発が加速されると期待を寄せている。

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