- 2023-8-10
- 技術ニュース, 電気・電子系
- Beyond 5G, Beyond 6G, NAOJ, NICT, ミリ波/テラヘルツ波, 情報通信研究機構, 研究, 絶縁体, 自然科学研究機構国立天文台, 自由空間法, 解析アルゴリズム, 誘電率, 電気的特性
情報通信研究機構(NICT)は2023年8月8日、自然科学研究機構国立天文台(NAOJ)と共同で、絶縁体の電気的特性を従来よりも100倍正確に測定できる解析方法を発表した。次世代通信網であるBeyond 5G/6Gの実現に向けたデバイス開発への貢献が期待される。
今回、電気を通さない絶縁体に電圧をかけた際、内部の電子がどのように反応するかを示す「誘電率」という値について研究した。電波望遠鏡を天文学者が求める性能通りに開発するには、正確にレンズの誘電率を測定する必要があるほか、通信の分野でも誘電率を正確に測定する必要がある。
誘電率を正確に測定する方法の一つに「共振器法」があるが、この方法では、材料を共振器に収まるサイズ(時に厚さ数百マイクロメートル以下)に精密加工することが求められる。また、いくつかの特定の周波数での誘電率しか測定できないという難点がある。難点が少ない「自由空間法」という方法もあるが、測定結果の解析に近似が用いられているため、これに起因する誤差で正確な測定が困難であるという難点があった。
研究チームは今回、電磁波伝搬の計算手法を工夫し、自由空間法を用いながらも誘電率を厳密に導き出す解析アルゴリズムを開発した。検証では、従来の解析方法に比べ、近似に起因する誤差を100分の1に低減。誘電率を正確に計測することが可能であることを実証した。
また、アルマ望遠鏡のために開発されている受信機のレンズ材料候補を実測した結果、他の測定手法と一致したため、実際のデバイス開発での有用性が示された。これは、広い周波数帯域にわたり、ミリ波/テラヘルツ帯での材料の誘電率を連続的かつ正確に計測する技術が確立できたことになる。
この結果は、開発のスピードアップにもつながる。正確な誘電率を設計の段階から把握することで、不要な試行錯誤を減らし、開発コストを削減できる。