「若返り薬」を実現か――ハーバード大、細胞を若返らせる化学薬品を発見

ハーバード大学医学部の研究チームは、化学的アプローチにより細胞を若い状態にリプログラミングする初の手法を発表した。これまでリプログラミングは、遺伝子導入をする必要があった。研究成果は、『Aging』誌に2023年7月12日付で公開されている。

David A. Sinclair博士をリーダーとする今回の研究は、分化した体細胞に「山中因子」と呼ばれる4種類の遺伝子を導入することで、iPS細胞を作製する発見を踏まえて実施された。iPS細胞の発見により、細胞が若くなりすぎたり細胞のがん化を引き起こしたりすることなく、細胞の老化を逆転できるのかという問題が提起された。

今回の研究では、若い細胞と老化細胞を区別するために、定量的核-細胞質分画化(quantitative nucleocytoplasmic compartmentalization:NCC)アッセイなどのスクリーニング法を新たに開発し、組み合わせることで細胞を若返らせることができる6種類の化合物を特定した。この化合物カクテルは、1週間以内にNCCと全ゲノムの転写産物を若い状態に戻し、トランスクリプトーム年齢を逆転させることができるという。

研究チームはこれまでに、山中因子の一部を細胞に導入することで、無秩序な細胞増殖なしに細胞の老化を逆転できることを実証している。視神経、脳組織、腎臓、筋肉を対象とした研究では有望な結果が得られており、マウスを用いた実験では視力の改善と寿命の延伸が観察された。また最近では、サルでも視力が改善することが報告されている。

遺伝子治療の代わりに化合物を用いて老化を逆転することができれば、加齢やケガ、加齢関連疾患の治療に革命をもたらす可能性があり、開発コストの削減と開発期間の短縮が期待できる。

研究チームは、加齢関連疾患が効果的に治療でき、ケガがより効率的に治り、全身を若返らせることができる未来を夢見ている。Sinclair博士は自身のTwitterで「この新発見は錠剤1つで老化を逆転できる可能性を秘めており、応用範囲は視力の回復から加齢関連疾患の治療にまで及びます」と、成果への期待を明らかにしている。

関連情報

NEW STUDY: Discovery of Chemical Means to Reverse Aging and Restore Cellular Function… | Aging

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