- 2023-9-5
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- インナー, ウィーン繊維研究所, オーストリア宇宙フォーラム(OeWF), シクロスポリン, テキスタイル, ペニシリン, 二次代謝産物, 宇宙服, 微生物, 抗菌素材, 欧州宇宙機関(ESA), 殺生物性繊維加工技術, 洗濯, 赤色色素プロジギオシン, 銀, 銅, 青紫色素ビオラセイン
欧州宇宙機関(ESA)が惑星探査用のテキスタイルを開発するプロジェクトの一環として、洗濯なしで衛生状態を保つ宇宙服のインナー開発に取り組んでいる。活用するのは微生物の二次代謝産物だ。
月面や宇宙空間で使用される宇宙服は、水を使った洗濯が困難なほか、複数人で共有されることが多いため、その内部は微生物の温床になりやすい。銀や銅などが従来の抗菌素材として広く知られているが、皮膚の炎症や経年劣化の可能性がある。そこで、微生物の二次代謝産物に目を付けた。有名な例であるペニシリンやシクロスポリンに見られるように、微生物の二次代謝産物は抗生物質的な性質を持つことが多い。
ESAの一員であるオーストリア宇宙フォーラム(OeWF)はウィーン繊維研究所と協力し、微生物の二次代謝産物を用いて繊維を染色するという殺生物性繊維加工技術を開発。これによって加工した材料を放射線や砂、人間の汗を模した物質にさらしたところ、微生物が生成する青紫色素ビオラセインや赤色色素プロジギオシンなどの抗菌剤としての有効性や適性について知見が得られた。
新しく開発された繊維は、2024年3月にアルメニアで実施される有人火星ミッションのシミュレーションにおいて、試用される可能性があるとしている。