神経科学がヒントに。リチウムイオン電池の充電時間を短縮する電極微粒子の特徴が明らかに

Image credit: Jinhong Min, Li+ Research Group

米ミシガン大学の研究チームは、リチウムイオン電池の正極に生じる亀裂が、電池の寿命を縮める一方で、電池の充電時間を短くすることを明らかにした。同研究成果は2023年7月27日、「Energy and Environmental Sciences」に掲載された。

電気自動車用バッテリーの正極は、リチウム、ニッケル、コバルトなどの金属酸化物からなる数兆個の微粒子で構成されている。理論上、充電速度は、正極の微粒子の表面積対体積比で決まる。粒子が小さいほど、体積に対する表面積が大きく、粒子を通るリチウムイオンの拡散距離が短いため、より速く充電されるはずだ。

しかし、従来の方法では、正極粒子ごとの充電特性を直接測定できず、粒子の平均的な特性しか測定できなかったため、充電速度と粒子の大きさとの関係は、単なる仮定に過ぎなかった。

そこで研究チームは、神経科学で一般的に使用する、個々の脳細胞がどのように電気信号を伝達するかを調べる装置を、今回の微粒子測定に適用した。

100個の微小電極を備えた2×2cmの装置を設計し、人間の髪の毛の70分の1ほどの細さの針を用いて、電極装置上の粒子ごとの充電速度を測定した。

実験の結果、正極粒子の充電速度は、粒子の大きさに依存しないことが明らかになった。研究チームは、予想外の結果について、亀裂のある大きな粒子は小さな粒子の集団のように振る舞うことに起因すると推測している。

多くの電気自動車メーカーは、亀裂が電池の寿命を縮めるため、亀裂を最小限に抑えようとする。しかし、ミシガン大学のYiyang Li助教は、「亀裂を除去すると、亀裂による追加の表面積がないため、バッテリー粒子は急速充電できなくなるだろう」と述べた。

リチウムをより速く移動させる別の材料で単結晶正極を作るという選択肢もあるが、そのような材料は金属の供給量に制限があったり、エネルギー密度が低かったりする可能性があるという。

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