測定時間を大幅短縮する電磁ノイズの可視化システムを開発 パナソニック コネクトと金沢大

パナソニック コネクトと金沢大学は2023年9月14日、スタック型メタサーフェス電波吸収体を用いたセンサを搭載した電磁ノイズの可視化システムを開発したと発表した。従来の機器より軽く、現場へ持ち運びが容易なため、電子機器から放射される電磁ノイズをリアルタイムに測定できる。研究成果は8月に開催された「EMC+SIPI 2023/2023 IEEE International Symposium on Electromagnetic Compatibility, Signal & Power Integrity」と「第35回国際電波科学連合総会/URSI GASS 2023/35th URSI General Assembly and Scientific Symposium」で発表した。

近年、IoT技術の進歩が加速する中、電子機器が取り扱う情報量が増加し、データ通信の高速化が進んでいるが、それにともない、電子機器が発する不要な電磁ノイズも増大する傾向にある。このため、製品開発の現場では、電子機器を電波暗室内に設置して、発生する電磁ノイズの強度を周波数毎に測定し、EMC規格で定められた限度値を超えていないかを確認している。

両者が開発した電磁ノイズ可視化システムは、パナソニック コネクトの電磁界シミュレーション技術と、金沢大学が開発した薄板状の電波吸収体に吸収される電波強度から電波の2次元分布を計測する技術が用いられている。

具体的には、プリント基板上に、波長よりも十分に小さい金属パッチの周期構造を2次元平面上に形成(メタサーフェス)したうえで、プリント基板を上下2段にスタックして、2つの共振器を適切に結合させるスタック型メタサーフェス電波吸収体を開発。これによって、幅広い周波数範囲(300MHz〜1.4GHz)の電磁ノイズを吸収できる性能と、センサの小型化の両立を可能にした。

システムは、A4サイズのメタサーフェスと、リアルタイムスペクトラムアナライザとPCから構成され、重量はわずか3kgに軽量化した。これによって持ち運びが容易になり、セットアップも短時間でできるようになった。約5分でリアルタイムの測定を開始できるため、現場の測定作業の効率化も図れる。

また、従来の電磁界センサで空間的に走査する方式では、A4サイズを測定するのに数十秒かかり、短時間のみ放射されるようなバーストノイズの取りこぼしが発生していた。本システムでは、アレイ型に並べられたセンサで取得した電磁ノイズをRFスイッチで高速に切り替えるので、1秒以下でのリアルタイム表示ができる。

パナソニック コネクトと金沢大は、このシステムを活用すれば、製品開発での検証だけでなく、工場の設備の電磁ノイズによるトラブルの解決や、パワーエレクトロニクス設備、車載機器、医療機器などで起きるさまざまな課題への対応が容易になるとしている。

関連情報

世界初、スタック型メタサーフェス電波吸収体を用いたセンサを搭載した電磁ノイズの可視化システムを開発、国際学会IEEE、URSIで発表 | 技術・研究開発 | 技術・研究開発 | プレスリリース | Panasonic Newsroom Japan : パナソニック ニュースルーム ジャパン

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