医療機器一筋のキャリアからの変化。リチウムイオン電池やセルロースナノファイバーなど、未経験の技術へ挑戦できる「プロエンジニア」の働き方___メイテック 鈴木 雄大氏

株式会社メイテックは、全産業界の企業を対象にプロフェッショナルなエンジニアによる設計・開発業務のソリューションサービスを提供している企業だ。鈴木 雄大氏は、医療機器の設計開発、フィールドエンジニアとしての業務経験を持ち、エンジニアとしての視野を広げるために、様々な業界に挑戦できる派遣という働き方を選択した電気系エンジニアだ。そんな経歴を持つ鈴木氏に、これまでのキャリアやエンジニアという職業の働き方や魅力、そしてメイテックという会社についての考えを語っていただいた。(執筆・撮影:編集部)

小さい頃の夢だった「人の命を救う」仕事に、エンジニアとして関わる。

──鈴木さんがエンジニアという職業を選択したきっかけを教えてください。

[鈴木氏]小さい頃は人の命を救う医者を目指していたのですが、学生時代の友人の影響でパソコンに触れるようになると、自然と電気や情報の分野に興味を持つようになりました。大学受験の頃は世間でインターネット上の犯罪が増加していたことから、将来は「多くの人がインターネット上で嫌な思いをしないよう、ホームページの運用管理の仕事に就こうか」と考えるようになり、大学は電子情報工学科を選択。

ところが、入学初日の研究室紹介で医療機器をテーマにした研究室があることを知り、「昔の夢だった人の命を救う仕事に、エンジニアとして関われるのではないか?」と考え、その研究室を選択しました。こうして、医療機器メーカーのエンジニアを目指すことになったのです。

──その研究室との出会いが、エンジニアを選択するきっかけになったのですね。就職活動は医療機器メーカー一本に絞って活動されたのでしょうか?

[鈴木氏]その通りです。医療機器に絞って活動する中で一番興味を惹かれたのは、新生児向けの保育器や分娩台、診察台などを製造しているメーカーでした。私も未熟児で保育器の世話になっていたという背景もあり、この会社へ入社することにしたのです。

──念願の医療機器メーカーへの就職ですね。どのような業務を担当したのでしょうか?

[鈴木氏]まず、開放型保育機の温度試験、異常を知らせる警報音の調整などの評価業務を担当しました。指導してくれた先輩の影響から回路設計とプログラミングを学ぶようになり、1カ月程評価業務に携わった後は、すぐに別の製品で回路設計とC言語によるプログラミングを担当することに。この会社では一人が担当する業務範囲が広かったので、私も製品の仕様検討から製造まで、ものづくりの一連の流れを経験することができました。

──この会社ではどのようなスキルや経験を得られましたか?

[鈴木氏]医療機器は安全基準が高く、製品が壊れた時を想定して誤作動しないことが求められるので、私も業務の中で医療機器特有の規格、製品の安全性や品質を担保するという考え方とスキルを習得しました。評価業務の経験から、EMC試験も一通り経験できましたし、アナログ回路設計やプログラミング技術、生産調整など、幅広く技術とスキルを学ぶことができました。

──電気系エンジニアとしての基礎となる力を積み上げた時期ですね。この会社には3年半在籍して、その後転職されていますが、どのような背景があったのでしょうか?

[鈴木氏]転職の理由は「もっと患者さんに近い立ち位置で、直接役に立てる仕事をしたい」と思うようになったことです。自分が携わった製品が患者さんにどう使われているのか、もっと近くで知るためにフィールドエンジニアに転職しました。

──設計開発からフィールドサービスへのキャリアチェンジですね。どのような業務を担当されましたか?

[鈴木氏]担当したのは、電磁気の力を使って画像診断をするMRI装置の保守、点検、故障対応です。基本的に作業は深夜で、故障の場合は装置が直るまで対応しなければならないので、結構ハードな業務でしたね。

──MRI装置のような精密機器を扱うには、高い専門知識も要求されるのでは?

[鈴木氏]装置の機構や部品、動作原理である電磁誘導などの知識が必要でした。この原理を理解しないと故障個所の特定ができないので、新たな知識習得の機会になりました。また、MRI装置には強力な磁石が使われるので、金属の工具を使うと装置に引っ張られて刺さってしまうため、非磁性工具の取り扱いや、作業場での安全配慮といった面でも、貴重な経験を積めたと思います。設計開発とはまた違った緊張感がありました。

──その他に業務上で苦労されたことや心掛けたことはありますか?

[鈴木氏]フィールドエンジニアの仕事は、故障など悪いことが起きた時に必要とされます。つまり、お客様が怒っている時に接することになるので、まずは相手の気持ちに寄り添い、お客様が何に困っているのか、ニーズをしっかり聞き出すことを心掛けました。お客様とのコミュニケーションの取り方はかなり鍛えられたと思います。

──その後転職されていますね。背景などを教えていただけますか?

[鈴木氏]理由の一つは、医療現場の仕事を経験して、やっぱり自分にはものづくりの仕事が向いていると気付いたこと。もう一つは、ずっと医療機器業界にいるので、エンジニアとして視野が狭くなっているのではないか、という危機感を持ったことです。そこで、転職活動では「医療機器以外の業界で、人の役に立てる仕事」を探しました。最初は家電業界を中心に検討していたのですが、転職活動の早い時期にメイテックを知る機会があり、エンジニア派遣業界との2軸で転職先を検討することにしたのです。

1社に勤めながら、様々な業界で経験が積める「派遣エンジニア」を選択。

──メーカー正社員として仕事をしてきた中で、「派遣エンジニア」を転職候補にしたのはなぜでしょうか?

[鈴木氏]メイテックを知ったのは、多くの企業が集まる転職フェアでした。そこで中途人材紹介を手掛けるメイテックネクストの担当者に声をかけてもらい、メイテックグループなら正社員として雇用されながら、幅広い業界でお客様の設計開発の重要なポジションに携われる、という話を聞き、それをとても魅力的に感じたからですね。

──派遣という働き方について、何か不安に思うことはありましたか?

[鈴木氏]正直な話、最初は給与面の不安がありましたが、モデル給与を見せてもらったところ、今までの給与と比較しても十分な金額だったので、不安はすっかり解消されました。そして、幅広い業界でエンジニアとして経験を積むことができる点が決め手になり、メイテックで選考を進め、電気系エンジニアとして内定をもらうことができました。入社後も社会人としての基本的なビジネスマナー、顧客満足度、専門である電気の基礎知識などを学び直す新入社員研修があり、安心して配属を待つことができました。

未経験のリチウムイオン電池に携わり、プロとしての取り組み姿勢を知る。

──最初の配属先ではどのような業務を担当されたのでしょうか?

[鈴木氏]提案された業務は、化学メーカーでのリチウムイオン電池パックの回路設計・評価でした。私の希望した医療業界以外で、自分では想像もしなかった業務に携わる機会をもらえて、とても嬉しかったのを覚えています。

配属先では無人搬送車(AGV)や住宅の太陽光発電向けに、ラミネート型のリチウムイオン電池を何個も積み重ねる蓄電池の開発を担当しました。業務も電池ユニットの電気的仕様や制御基板の保護機能、筐体寸法などの仕様作成から、回路図のチェックや制御基板の評価、顧客折衝、EMC試験、試作機の生産スケジュール管理など、幅広く任せてもらえて、最先端のリチウムイオン電池の知識、生産工程の管理など、新しい技術知識を習得することができました。

──派遣エンジニアとして初めての業務ですが、苦労したことはありますか?

[鈴木氏]最初はお客様先でどう振舞えばいいのか不安でしたが、お客様先の上司がメイテックのエンジニアと一緒に仕事をした経験があり、「メイテックのエンジニアには重要な仕事を任せられるのを知ってるから、鈴木さんもどんどん仕事に取り組んでほしい」と私にも期待をかけてくれたのです。

その後は外部人材という立場は意識せず、お客様先の社員と協力して良い製品をつくりたい、と考えるようになりました。メイテックの先輩たちがお客様と強固な信頼関係をつくってくれたおかげで、初めての業務に対する不安も払拭されました。

──派遣エンジニアとして働き始めて、業務への取り組み姿勢で何か変化したことはありますか?

[鈴木氏]私の考えですが、メーカーの正社員で働いていた頃は、その職場に居て当たり前、与えられた仕事をしっかりこなせば何とかやっていける、という意識だったように思います。しかし、メイテックのエンジニアは、時間単価の契約でお客様から高い対価をいただきます。ですから、1分1秒も無駄にせず、与えられた業務をこなすのは当然のこととして、お客様が求める以上のアウトプットを出す、という意識を持って業務に取り組むようになりましたね。

──ありがとうございます。この業務の後に、メイテック社内で研修講師をされているのですね。

[鈴木氏]はい。入社後の研修で現役エンジニアが講師をしていると聞いて、そんな経験も積めるのかと興味を持ったのです。人前で話をすることに苦手意識があったので、講師を経験すればエンジニアとしてもっと成長できるのではないかと考え、お客様と所属拠点に相談して承諾を得た上で、研修講師に挑戦しました。

──研修講師を経験して、どんな点で成長を実感しましたか?

[鈴木氏]一番は人を見る力だと思います。新卒や中途入社の社員に接する業務なので、相手の考えや想いをしっかり理解して、悪いことは悪いと指導する。そうした経験が人を見る力を養うことにつながったと思います。エンジニアが望めば、こうした新しい経験が積める機会があるのはとても助かります。

設計開発から研究開発へ。需要の高まる環境系の業務へ挑戦。

──メイテックは自社で教育専門の部署を持っているからこそ、エンジニアが新しい経験を積めるということですね。この後は、どのような経験を積まれたのでしょうか?

[鈴木氏]その後はリチウムイオン電池の業務経験を買われて、研究機関で車載用電池の二酸化炭素(以下、CO2)排出量計算をすることになりました。これまでのものづくりの仕事とは異なる研究開発の仕事ですが、需要の高まるカーボンニュートラルやCO2排出量の削減といった領域に関わることは、今後のキャリア形成でプラスになると思い、挑戦することにしました。

そこで担当したのは、車載用電池の製造に関わる完成車メーカー、素材メーカー、部品メーカーの人たちと協力して、製品の材料採掘から製品を出荷するまでの間で発生する、CO2排出量の計算方法や情報の入手手段をアドバイスする業務です。リチウムイオン電池の材料発掘から製品出荷まで、全ての製造工程を理解しないとCO2排出量の計算ができないので、配属が決まった後、必死で勉強しました(笑)。

──現在もこの業務を続けているのでしょうか?

[鈴木氏]いえ、その後は風化促進で世の中のCO2排出量を減らすプロジェクトや、セルロースナノファイバーの開発コスト削減とCO2排出量の削減効果検証などに携わりました。どれもこれからの世の中でエンジニアに求められる環境負荷を軽減するための技術知識ですから、今後ものづくりの仕事に戻ったときに活かすことができると思います。

──研究者寄りの業務ですが、ご自身の満足度という点ではいかがですか?

[鈴木氏]今の業務に非常に満足していますね。環境系の業務は、将来のために地球温暖化を抑制するという目的があるので、「誰かのために役立つ仕事をしたい」という私のエンジニアとしての矜持にも一致します。こんなやりがいのある業務に就けるのも、様々な業界で仕事をする機会と場があるメイテックならではですね。

派遣という働き方、メイテックという会社の魅力とは?

──ここからは会社や働き方についてお聞きします。まず、鈴木さんが思う「派遣エンジニア」という働き方の魅力を教えてください。

[鈴木氏]派遣エンジニアとして働くことで、「俯瞰して業務する」ことができるようになりました。医療機器メーカーの頃は頭の中には医療機器しかなくて、他の業界との技術、知識のつながりを意識することはあまりなかったのですが、様々な業界のお客様先で仕事をしたことで、今の業界だけでなく、別の業界で何か活かせる知識や技術はないかと意識するようになりました。メイテックのお客様も、きっと自社にはない知識や技術を求めるからこそ、私たちに期待し、任せてくれるのではないでしょうか。

──鈴木さんは「派遣エンジニア」という働き方が向いている人は、どのような人だと思いますか?

[鈴木氏]人と話すことが好きなコミュニケーション力が高い人だと思います。私たちは常に新しい職場環境、人間関係に向き合うことになるので、既に出来上がっているコミュニティに対して、臆さず輪に入っていける人が向いていると思います。

また、色々なことに興味がある、好奇心の強い人も向いていますね。自分では想像してなかった業界、製品を経験できるチャンスが常にあるので、このような素養を持つ人にとっては、とてもお勧めできる働き方です。

──メイテックという会社の魅力を教えてください。

[鈴木氏]「派遣エンジニア」は職場で孤立してしまうのではないか、と思う方もいるかもしれません。しかし、メイテックでは全くそういったことはなく、社内で頻繁に企画される研修や懇親会に積極的に参加すれば、社内のつながりはすぐにつくれます。メイテックのエンジニアは気さくで面倒見がいい人が多く、他のお客様先で働いている先輩エンジニアも気軽に相談にのってくれます。こうした社員同士のつながりが強い点が魅力の一つですね。

他にも、AIや自動運転など最新のトレンド技術に携わっているエンジニアが沢山いて、会社からもトレンド技術に関する情報提供があるので、自身のキャリア形成を考える際にとても助かっています。

──最後にエンジニアとしての今後の目標を教えてください。

[鈴木氏]私がエンジニアとして大事にしていることは、「一人でも多くの人の役に立ちたい」という想いです。その想いに合致する業務であれば、どんな業界でもチャレンジしていきたいです。ユーザーだけでなく、お客様先の社員やメイテックの仲間たちの役に立てるように、新しい知識と技術をどんどん習得していきたいですね。

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