深紫外LEDでの高速変調メカニズムを解明――太陽光に影響されにくい光無線通信の実現に期待 東北大学ら

(a)深紫外LEDの断面構造概略図、(b)p側電極平面像、(c)LEDを点灯させて観察した顕微発光像

東北大学は2020年8月3日、情報通信研究機構および創光科学と共同で、深紫外LEDでの高速変調メカニズムを解明したと発表した。

太陽光の影響を受けずに光情報通信が可能な深紫外波長帯は、「ソーラーブラインド帯」として知られ、日中の屋外でも低雑音で光無線通信できる波長帯として期待されている。

同大学らは2018年に、世界で初めて深紫外窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)LEDで、2Gbpsを超える高速光通信を室内照明環境で実現。続いて2019年には真夏の屋外においてもギガビット級の光無線通信を安定的に実現できることを実証した。しかしその時点では、そのような高速通信が可能なメカニズムの解明には至らなかった。

今回の研究では対象のLEDの光物性を、高速な光現象の観察が可能なストリークカメラや、高精度の深紫外光学顕微鏡を用いて評価した。すると自己組織的に形成された多くの微小発光点の存在を発見。この微小発光点の1つ1つが微小LEDとして振る舞うことで、素子全体の電気容量を実質的に低下させ、その結果変調速度が向上し高速通信を実現させていることを解明した。

深紫外LED中に自己形成された微小発光点。量子井戸層に形成されたポテンシャル最小点が微小電流路とつながっており、微小LEDの集合体を形成している。(冒頭画像と上下が反転していることに注意)

今回の研究の成果は、変調速度を向上させるほど光出力が低下するという通信用LEDの微小化戦略が持っていたジレンマを解消できる可能性がある。また今回は殺菌用LEDを流用してソーラーブラインドの高速光通信を実現させており、コスト抑制の面からも有用だ。

今後はより高速なソーラーブラインド光無線通信を実現させるために、LEDや通信路の改善を行っていく。また生態侵襲性を考慮して、さらに微弱な光での深紫外光通信の可能性を検証する。

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