MIT、テイルシッター型VTOL向けに複雑で高速なアクロバット飛行を可能にするアルゴリズムを開発

Credits:Image: Courtesy of the researchers

米マサチューセッツ工科大学(MIT)は、捜索救難などに適したテイルシッター型垂直離着陸機(以下、テイルシッター)向けに、複雑な高速アクロバット飛行を可能にする軌道計画制御用アルゴリズムを新しく開発した。この研究は、2023年8月18日付で『IEEE Transactions on Robotics』に掲載された。

テイルシッターは、尾翼を下方向に向ける形で垂直に離着陸し、離陸後は水平方向に傾いて前進飛行する固定翼機だ。クアッドコプター型ドローンよりも高速で効率的な多用途機であるテイルシッターは、飛行機のように広範囲を飛行できるうえ、ヘリコプターのようにホバリングもできるため、捜索救難や小包配送などの任務に適している。

しかし、テイルシッターの動きは複雑であるため、研究や商用利用はクアッドコプター型ドローンのように制御しやすい航空機に集中する傾向にある。テイルシッターは敏しょうなアクロバット飛行が可能であるにもかかわらず、テイルシッター用の軌道生成および制御アルゴリズムのほとんどは、ゆるやかな軌道とゆっくりとした遷移に重点を置いている。

また、一般的には、軌道計画アルゴリズムにおいてシステム力学を単純化する、あるいは、ヘリコプターモード用と飛行機モード用といった異なる2つのモデルを使用するという手法を用いている。しかし、どちらの手法においても激しく変化する軌道を計画し、実行することはできない。

そのため、テイルシッターの性能を最大限発揮できるようにするには、加速度が急激に変化する機敏な軌道に特化した、軌道計画制御アルゴリズムを設計する必要があった。そこで、研究チームは、垂直離陸から前進飛行や横方向への飛行など、あらゆる飛行状態に適用できるグローバルダイナミクスモデルを使い、機体が飛行可能な条件をすべてカバーできるようにした。

次に、軌道生成において重要なステップは、計画された軌道を機体が実際に飛行できるかどうかを確認することだ。テイルシッターはフラップやローターを備えた複雑なシステムであり、軌道が実行可能かどうかを確認するには非常に多くの演算が必要となる。このことが従来の計画アルゴリズムにとって課題となっていた。

今回、微分フラットネス(differential flatness)を採用することで、数学的関数を用いて軌道が実行可能かどうかを素早くチェックできるようになった。新しいアルゴリズムは計算効率が非常に高く複雑な軌道をリアルタイムで計画でき、横方向への飛行や倒立飛行のような難しい飛行も実行可能だ。

研究チームは、新しいアルゴリズムを使って、テイルシッターによるループ、ロール、上昇旋回など複雑な動きをする飛行をMITの屋内飛行スペースで実演した。さらに、3機のテイルシッターがアクロバティックなシンクロ飛行をして、空中に設置されたゲートを高速で通過する様子も披露した。

今回開発されたアルゴリズムにより、例えば、崩壊した建物の中へ飛び込んでいき障害物を避けながら生存者を迅速に捜索するといった、絶えず変化する環境において、テイルシッターが自律的に複雑な飛行をすることができるようになる可能性がある。

研究チームはこのアルゴリズムを拡張し、風やその他の環境条件が大きな影響を及ぼす可能性がある屋外での完全自律飛行で、アルゴリズムを効果的に使えるようにすることを目指すとしている。

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