心臓のための絆創膏――ミミズからヒントを得た新しい3Dプリント技術で作製

米コロラド大学ボルダー校が率いる研究チームは2024年8月1日、新しい3Dプリント法を開発し、強度と弾力性に優れ、将来的に心臓の欠陥を修復できる可能性があるパッチを作製したと発表した。

ハイドロゲルは、人工組織や臓器、インプラントの製造において有望な候補とされている。しかし、従来の3Dプリントしたハイドロゲルは、伸ばすと壊れたり、圧力がかかると割れたり、硬すぎて組織にフィットするように成形できなかったりするという問題があり、臨床に導入するのは困難だった。

今回の研究では、ミミズからヒントを得た。ミミズは互いに絡まったりほどけたりを繰り返しながら、固体と液体のような性質の両方を持つ3次元の「ミミズの塊」を形成している。これまでの研究で、これと同様に絡み合った分子の鎖を組み込むことでより強靭になることが分かっていた。

そこで研究チームは「Continuous-curing after Light Exposure Aided by Redox initiation(酸化還元反応による光照射後の連続硬化:CLEAR)」と呼ばれる手法を開発した。光による迅速な重合で部分的に反応させた後、酸化還元反応による遅いプロセスを用いることで、ミミズのように高密度で絡み合った長いポリマー鎖を形成できた。

この新材料は、心臓の持続的な鼓動に耐えられるほど弾力性があり、関節にかかる負荷に耐えられるほど頑丈で、患者特有の欠陥に合わせて簡単に形を変えられる。さらに、濡れた組織にも簡単に接着するという利点もある。

将来的にはこの材料で心臓の欠陥を修復したり、組織再生薬を臓器や軟骨に直接届けたり、椎間板の膨張を抑えたり、さらには針や縫合糸が引き起こすような組織の損傷なしに、手術室で縫合することさえできると研究チームは想定している。

今回の研究成果は、2024年8月1日付で『Science』に掲載された。また、すでに仮特許を申請している。

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