安定した水素製造技術の開発に向けて、光電気化学材料の劣化機構を解明

Photo: Davide Derelli

ハンブルク大学とドイツ電子シンクロトロン、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの研究チームが、光で水を水素と酸素に分解できる、光電気化学材料の劣化機構を解明した。

同研究成果は2023年8月28日、「Angewandte Chemie International Edition」誌に掲載された。

光電気化学(PEC)の水分解反応は、現在、太陽エネルギーを水素エネルギーに直接変換するための最も有望なアプローチのひとつだ。しかし、従来のPEC材料は不安定であり、実用化が遅れている。照射光や外部電圧、電解液中の化学イオンの存在によって、ほとんどのPEC材料は、時間の経過とともに急速に劣化するが、劣化機構の多くは、ほとんど解明されていない。劣化機構の解明は、より安定で効率的なPEC材料を開発するのに不可欠なステップとなる。

研究チームは、数秒単位の高い時間分解能でX線散乱パターンを取得できる、ドイツ電子シンクロトロンのX線を用いて、光を照射して電圧を印加した運転条件下におけるPEC材料の構造変化を観測した。低角と高角のX線散乱パターンから異なる構造情報を同時に収集するために、2つの検出器を使用し、PEC動作中の材料構造変化を包括的に明らかにした。

同研究では、最近PECの有望な材料として注目されているCuBi2O4を対象に、動作中の性能劣化に寄与する構造変化について調べた。その結果、金属Bi相の形成が速い劣化過程と直接相関し、電解液と接触した電極材料の溶解と金属Cuの形成が遅い劣化に寄与することが分かり、PECの劣化の原因と構造変化が結び付けられた。

同研究は、再生可能エネルギー普及に重要なPECの水素製造安定化に貢献する。ハンブルク大学のDorota Koziej教授は、「動作中のPEC材料の劣化を理解することは、最初のステップに過ぎません。目標は、PECデバイスの安定性と効率の両方を高める新しい戦略を開発することです」と説明した。

関連情報

Renewable energy through photo-electrochemistry : MIN Faculty : Universität Hamburg

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