新手法による、低コストな超高速イメージングを可能にするカメラ――市販部品を使用、高速LiDARなどへの応用に期待

CREDIT: XIANGLEI LIU AND JINYANG LIANG, INSTITUT NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE (INRS)

既成の部品を使用し、全く新しい手法で超高速イメージングを実現するカメラが開発された。カナダのケベック大学・国立科学研究所(INRS)が、カナダのコンコルディア大学および米Metaと共同で行った研究によるもので、その詳細は2023年9月14日付で『Optica』に掲載された。

落下する水滴や、分子の相互作用のような高速の動きをぶれることなくとらえるには、1秒間に数百万もの画像を取得する高価な超高速カメラが必要だ。超高速イメージングは大きく進歩しているが、市販の超高速カメラの価格はおおむね10万ドル(約1500万円)以上と高価であり、実装も複雑という問題がある。また、各動画内でキャプチャーされたフレーム数と、光のスループットや時間分解能とのトレードオフによって、その性能は制限されている。

今回の研究ではこれらの問題を克服するため、「時変光回折(time-varying optical diffraction)」と呼ばれる時間ゲート法を開発し、新しい回折ゲート式リアルタイム超高速マッピング(Diffraction-gated Real-time Ultrahigh-speed Mapping:DRUM)カメラを作り上げた。このDRUMカメラは、動的事象を1回の露光で1秒間に480万フレーム撮影できる。

一般に、光がセンサーに当たるタイミングを制御するためにカメラはゲートを使用する。例えば、従来のカメラのシャッターは、1回だけ開閉するタイプのゲートだ。タイムゲーティングでは、センサーが画像を読み取る前に、ゲートが連続して一定回数開閉して、ある場面の短い高速動画を撮影する。

今回の手法は、光学における時空間二重性を考慮に入れ、光の回折を利用してタイムゲーティングを実現するというものだ。回折格子上の周期的なファセットの傾斜角を急速に変化させると、異なる方向に進む入射光の複製を複数生成でき、異なる空間位置をスイープ(掃引)して異なる時点のフレームをゲートアウトする方法が可能になることが分かり、このフレームをまとめると超高速動画を作り出すことができる。

幸い、プロジェクターに使われる一般的な光学部品であるデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を転用することで、この種の掃引回折ゲートを実現できる。DMDは大量生産が可能であり、回折ゲートを作り出すために機械機構を必要としないので、新しいシステムはコスト効率に優れ、安定している。

こうして研究チームは、短い動画で7フレームをキャプチャーする、シーケンス深度7フレームのDRUMカメラを作成した。このシステムの空間分解能と時間分解能を評価した後、液体と相互作用するフェムト秒レーザーパルスの高速ダイナミクスと、生物学的サンプルにおけるレーザーアブレーションのイメージングによって、その性能を実証した。

まず、このカメラを使って蒸留水とレーザーとの相互作用を記録した。その結果、タイムラプス画像は、パルスレーザーに反応したプラズマチャネルの発達と気泡の成長を示し、測定された気泡半径はキャビテーション理論で予測されたものと一致した。また、炭酸飲料の気泡のダイナミクスを撮影し、超短レーザーパルスと単層のタマネギ細胞サンプルとの一時的な相互作用もとらえた。

このDRUMカメラは、薬物送達のリアルタイムモニタリングや自律走行用の高速LiDARシステムなど、幅広い用途での超高速イメージングをより安価な方法で提供できるようにする可能性がある。研究チームは、引き続きイメージング速度とシーケンス深度の向上など、DRUM撮影の性能向上に取り組んでいる。

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