分子レベルの薄さのパラジウムナノシートを開発――水素発生触媒として世界トップクラスの活性を実現 名古屋大学

名古屋大学は2023年11月14日、同大学未来材料・システム研究所の研究チームが、分子レベルの薄さのパラジウム(Pd)ナノシートを開発したと発表した。

Pdは、さまざまな触媒として用いられている貴金属だ。既存のPdの触媒には、粒子サイズが数nm〜数十nmの球状のナノ粒子が利用されている。

触媒に関しては、触媒活性が大幅に向上し、高コストな貴金属の使用量を抑えられる分子レベルの薄さのナノシートが近年注目を集めている。しかし、Pdナノシートの合成は、これまで困難とされていた。

同研究チームは今回、ギ酸トリクロロフェニル(TCPF)を一酸化炭素(CO)源とする新しい合成法「ワンポット法」を開発した。

同手法は、汎用的なガラス製サンプル瓶を用いて、TCPFを水や尿素などと一緒に反応させるものとなっている。微量のCOが段階的に生じ、高い収率でPdナノシートの合成が可能となる。75℃という低温下において、1時間の加熱で合成できる。

透過型電子顕微鏡により構造を解析したところ、得られたナノシートはPdの単相であり、厚さ約1.8nm、幅約50nmの六角形状単結晶であることが判明した。

(左)Pdナノシートを真上から測定した透過型電子顕微鏡像(挿入図)Pd ナノシートの制限視野電子回折像
(右)Pd ナノシートを側面から測定した透過型電子顕微鏡像

今回開発したワンポット法では、厚さや幅が均一に揃った状態で合成できたことも確認している。既存の合成法では、厚さや大きさが整ったナノシートを合成することは困難とされていた。

性能試験を実施したところ、PdナノシートはPd金属箔に対して2倍以上高い活性を示した。理想的な水素発生触媒とされる白金薄膜と同レベルとなっている。

Pdナノシートの水素発生触媒活性の結果

次に、原子間力顕微鏡(AFM)によるその場電気化学測定を用いて触媒活性サイトの評価を行い、ナノシート表面のどこで触媒反応が起こっているかを調べた。その結果、Pdナノシートの縁部分(エッジ)で水素発生活性が高いことが判明している。

原子間力顕微鏡(AFM)によるPdナノシートの水素発生反応のその場観察

今回の成果は、ナノシートを用いた高性能触媒の開発や、資源量を大幅に削減する新しい触媒設計に寄与することが期待される。

関連情報

分子レベルの薄さのパラジウムナノシートを開発 ~世界トップクラスの水素発生触媒を、低温で簡便に合成~ – 名古屋大学研究成果情報

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