極低温におけるトランジスタのスイッチング特性を解明――量子コンピューターの性能向上にも貢献 産総研

産業技術総合研究所(産総研)は2023年12月10日、極低温におけるトランジスタのスイッチング特性を解明した、と発表した。

量子コンピューター用の制御回路は、場合によっては4ケルビン(マイナス269.15 度)の極低温で動作させる必要がある。4ケルビン程度の極低温下でのトランジスタ特性は、従来の半導体物理による理論式から大きく逸脱することが分かっている。これまでの研究により、低温でのさまざまな電気特性などが判明してきたが、最も重要だと考えられるスイッチング特性については、統一的に説明できる理論が確立されていなかった。

トランジスタのオフ状態からオン状態へのスイッチング特性は、サブスレッショルド係数(S係数)と呼ばれる性能パラメータで評価する。通常S係数は温度に比例するが、50ケルビンから1ケルビンにかけての温度帯ではS係数が基本モデルから外れてしまうことが分かっていた。しかしその原因については定説がなかった。

今回の研究では、まず、研究対象温度の4ケルビンよりもさらに2桁低い0.015ケルビン(マイナス273.135度)まで電気特性を測定。一度減少が止まったS係数が、1ケルビン以下では再度減少に転じることが分かった。

この特性を理論的に説明するために、従来スイッチング特性を支配すると言われてきた可動電子モデルに代わり、捕獲電子モデルを適用して理論計算したところ、実験結果を再現することができた。

捕獲電子モデルは界面の欠陥部に電子が捕獲される電子モデルで、今回の結果により、界面の欠陥に捕獲される電子の量がスイッチング特性を決定していることが判明した。今回の研究結果により、低温で動作する集積回路をより正確に設計できるようになり、さらに量子コンピューターの研究開発が大きく加速することも期待できるという。

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産総研:極低温動作トランジスタのスイッチング特性を解明

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