MIT、機械学習によってフォトリソグラフィの精度を高める手法を開発

フォトリソグラフィは光を用いて基板上に微細なパターンをエッチングする技術で、コンピューターチップや光学デバイスなどで一般的に使用されている。しかし、光の回析のわずかなズレや光化学反応の小さな変化により、製造されたデバイスが設計上のものと微妙に異なるパターンになることがある。

マサチューセッツ工科大学(MIT)と香港中文大学の研究チームは、この「設計と製造のギャップ」を埋めるために、機械学習を用いて特定のフォトリソグラフィ製造プロセスを模倣する、デジタルシミュレーターを開発した。設計仕様により近い光学デバイスを製造できるようになり、エレクトロニクスの精度と効率を高められる可能性がある。

フォトリソグラフィは複雑でモデル化が難しいため、これまでは物理学に由来する方程式を使用して設計することが多かった。しかし、この方程式を利用する方法では、フォトリソグラフィシステム特有の偏差をすべて捉えることはできない。

そこで研究チームは、フォトリソグラフィシステムのシミュレーションを学習するAI技術を開発し、製造中に生じる微小な偏差を捉えることを可能にした。研究チームが「ニューラル・リソグラフィ」と呼ぶこの技術では、物理学に基づく方程式をベースとして、フォトリソグラフィのシミューレーターを構築し、実際のフォトリソグラフィシステムから得られた実験データを組み込む。実験データは、さまざまな大きさや形状を特徴とする設計パターンを、フォトリソグラフィにより製造することで取得する。できあがった製造物と設計仕様をペアにして、ニューラルネットワークの学習に使用する。

デジタルリソグラフィのシミュレーターは、光がデバイス表面にどのように投影されるかを捉える光学モデルと、光化学反応がどのように生じて表面にパターンが生成されるかを示すレジストモデルの、デュアルシミュレーター仕様となっている。

下流のタスクでは、ニューラルネットワークで学習されたフォトリソグラフィシミュレーターを物理学ベースのシミュレーターに接続し、回析レンズが光をどのように回析するかなど、このタスクで製造されたデバイスがどのように機能するかを予測する。ユーザーがデバイスに達成させたい結果を指定すると、2つのシミュレーターはより大きなフレームワークの中で連携し、達成するための設計方法をユーザーに示す。この技術を用いて作製した蝶の画像を浮かび上がらせるホログラフィック光学素子は、他の方法で作製したものと比べて、完璧に近い蝶の画像を生成することができた。

研究チームは今後、より複雑なデバイスを複雑化するためにアルゴリズムを強化し、一般的なカメラを使用してシステムを試験したいとしている。なお研究成果は、オープンアクセス論文として公開されている。

関連情報

Closing the design-to-manufacturing gap for optical devices | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
Neural Lithography: Close the Design-to-Manufacturing Gap in Computational Optics with a ’Real2Sim’ Learned Photolithography Simulator

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