イギリスの再生可能エネルギーグリッドを安定化させる巨大フライホイールプロジェクト

火力発電所などの同期発電機では、ローターが運動エネルギーを蓄えており、電力系統の障害などで瞬間的に発生する電力の過不足分を吸収または放出している。これを慣性力と呼ぶが、再生可能エネルギー発電の普及に伴い、送電網の慣性力の維持が課題とされている。太陽光発電は回転質量を持たず、また、大型の風力発電タービンにしても送電網に直接接続されていないため、慣性力を提供できないからだ。

慣性力がなければ、電力消費の変動に瞬時に対応できず、電源周波数が変動して電気の安定供給ができなくなる恐れがある。2019年8月9日、イギリスでは電力システムの周波数が48.8Hzに低下したため、ここ10年以上で最悪の大規模停電(ブラックアウト)が発生したと伝えられている。日本でも、2018年9月6日に北海道全域で起きたブラックアウトが電力の需給バランスの崩れによる周波数の低下に起因するものであったことは記憶に新しい。

この課題に対応するため、イギリスの系統運用事業者National Grid ESOは、GE製の回転式安定化装置の導入を決定した。

この装置は、縦軸回転の場合、重量400トンのフライホイールを毎分522回転させる大型の物で、スコットランド北東部のキースに設置される。この装置の高い慣性力が電力需給の変動を吸収し、送電網の周波数を安定させる。

National Grid ESOのネットワーク部門責任者であるJulian Leslie氏は、「イギリスの電力システムは、信頼性と再生可能電力レベルの両方の点で、世界で最も進んだシステムの1つだ。このようなアプローチは世界で初めてのものであり、2025年までにイギリスの電力システムをカーボンフリーで運用できるようにするという我々の野心的な目標への大きな前進だ。」とコメントしている。

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